先日、某コーヒーチェーンのカウンターで「デカフェ(カフェイン抜き)のコーヒーありますか?」と尋ねると、「へ?」と聞き返された。
新人さんだったようで、隣にいた先輩らしきスタッフの手助けもあり、無事カフェインの入っていないコーヒーを飲むことができた。
妊娠中及び授乳期のカフェイン摂取について、「1日1〜2杯なら、とくに気にせず飲んでも大丈夫」と助産師からの指導を受けていたので、そこまで厳密にこだわっているわけではないのだが、この1年、家ではずっとデカフェのコーヒー豆を購入しており、外出先でも可能な限りデカフェのコーヒーを注文している。
妊娠中や授乳期であっても、コーヒーを飲んで休憩したりリフレッシュしたい時は多々あると思うのだが、この「デカフェ」というやつ、あまり浸透している気配がない。
コーヒー豆を買おうにも種類が少ないし、取り扱いがない店も多いし、普通のコーヒーと比較すると当然割高である。色んな銘柄を試して飲み比べしてみたいと思いつつも、お手頃で近場で買えるもの、という条件の下、毎回同じメーカーのものを購入している。
欧米ではデカフェが普及しているらしいのだが、この違いは何だろう、とスターバックス発祥の地、シアトルでの在住経験がある友人に実情を聞いてみた。
彼女いわく、まず健康上、宗教上、価値観や信念など、さまざまな理由にある程度対応している(せざるを得ない)のが通常であるため、選択肢の多様性は当然のことだとか。
シュガーフリー、ファットフリー、ヴェジタリアンはもちろんのこと、最近増えている選択肢に、グルテンフリー(!)まである。地産地消、100%リサイクル可能、フェアトレードなど、強いこだわりを持つスーパーマーケットだけでなく、大手チェーンでも商品にその選択肢を取り入れるところは増えているそうだ。
コーヒーに関して言えば、デカフェは当然のこと、カフェラテひとつ飲むのにも、ホールミルク(いわゆる普通の牛乳)かソイミルク(豆乳)か以外にも、ノンファットミルク(無脂肪乳)、ハーフアンドハーフなど、その選択肢はさまざま。
日本ではまだあまり馴染みのない乳糖不耐症なんて体質も聞かれるようになってきたため、どんな人でもコーヒーを飲むことができる、というのがシアトルではスタンダードになっているようである。
(ただし、これは米東西海岸に代表される、わりと「健康に対する意識が高い」とされている大都市圏での話なので、アメリカ全土がこのような風潮とは限らないとのこと)
日本でもそのうち需要の拡大によってデカフェという選択肢が一般的になっていくだろうか? 淡い期待を抱いていたが、その前に大きな壁があることが分かった。
カフェインを除去する方法は薬品を使うか、水を使うか、二酸化炭素を使うかの3つに大別される。現在、日本では薬品を使う方法は認められておらず、食品衛生法の規格基準に適合しないため、薬品(有機溶剤)を使ったデカフェのコーヒーは輸入禁止になっている。
法律で制限されているとなればぐうの音も出ない。どう考えても法改正よりも私の卒乳の方が早そうだ……。また、二酸化炭素を使った除去方法は設備面のコストが課題となっておりまだ一般的にはなっていない。
実際、デカフェのコーヒーを注文している人はどれくらいの割合でいるのだろうか?
スターバックスに勤務する知人にも聞いてみたところ、デカフェ豆の存在自体はまだまだ認識されているとは言えず、注文するのは自分で調べて来たか、口コミで知った人が殆どとのこと。
カフェラテやカフェモカなどはエスプレッソ専用豆が使われており、こちらのデカフェ豆は輸入できないため、日本の店舗で提供できるのはドリップコーヒーのみとなるようだ。
(海外の店舗ではほぼ全てのコーヒー豆にデカフェが用意されているらしい!)
またデカフェのコーヒーは作り置きしていないので、注文されてから豆を挽いて淹れるため、少々時間がかかってしまうが、店側としては大歓迎なので遠慮せず注文してください!と頼もしい言葉も。
さらに、エスプレッソを使ったドリンク類でも、「ショット少なめ」、もしくは「リストレットショット」で、と注文とすれば、基本のショット量の半分(三分の一でも可)のエスプレッソで作ってもらえるそう。
この注文であれば、通常よりもカフェインの摂取を控えつつも、エスプレッソドリンクを楽しむことが可能になる。
何らかの事情でカフェインの摂取を制限されている人にも、平等にコーヒーを楽しむ機会が与えられているのはひじょうに嬉しいことだが、もっともっと広まってもよいのではないか。
妊娠中、授乳期に関わらず、胃腸の調子が悪いから、眠れなくなくなるから、などの理由からカフェインを控えることも十分考えられるし、一日に何杯もコーヒーを飲むサラリーマンにも好まれると思うんだけど……。
そういえば、家の近所の某コーヒーチェーン店にはご意見箱があった気がする。一度「デカフェのコーヒーがメニューにあると嬉しいです」とリクエストしてみようかな。
真貝 友香(しんがい ゆか)ソフトウェア開発職、携帯向け音楽配信事業にて社内SEを経験した後、マーケティング業務に従事。高校生からOLまで女性をターゲットにしたリサーチをメインに調査・分析業務を行う。現在は夫・2012年12月生まれの娘と都内在住。