「一生の愛」は存在するのか? 芥川賞作家・鹿島田真希さんの新作『暮れていく愛』

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2013年06月18日 07:11  BOOK STAND

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 夫婦にとっての最も大きな問題といえば、「浮気」なのではないでしょうか。

 20〜30代既婚男女200名を対象に「夫(もしくは妻)に、隠れてされたら嫌な行為は何ですか?」と、アイリサーチが調査したところ、男女共に1位が「浮気」という結果になりました。借金やギャンブルなど、夫婦にとって見過ごすことのできない問題もランクインしていましたが、浮気は互いの信頼を損なう問題。離婚に最も近いトラブルと言えるのではないでしょうか。

 芸能ニュースでも浮気ネタは尽きることがありません。モデルとの浮気現場に旦那が遭遇したと報道されている矢口真里のように、最近では、浮気は男性だけの問題ではなくなってきました。

「私は夫が絶対に浮気をしていると思っているし、それならばそんな人死ねばいいと思っている。私を愛さないで他の人を愛しているなんて、残酷すぎる。失礼だ。あの人は私に対する侮辱を償って死ぬべきだ。あの人は一生私を愛すると何度誓ったことか。私だけを」

 これは、『冥土めぐり』で芥川賞(2012年上半期)を受賞した鹿島田真希さんの新作『暮れていく愛』に登場する女性の言葉。同作は職場で出会って結婚した男女の物語。結婚後10年が経ちますが、子供はまだいません。男性は職場の女性に親切に接することができる紳士的なサラリーマン、女性は旅行やスイーツなどに興味のないおとなしい専業主婦。女性はある日、証拠がないのにも関わらず、上記のように、夫の浮気を疑いだすのです。

「男が女を一生愛する保証なんてないことはわかっていた。だから私はいつも、一生なんて本当? などとは訊かなかった。もしそれができなかったらどう責任取ってくれるの? とも言わなかった。だけど今思うとその辺をはっきりさせておけば良かったと思う」

 夫への疑いは確信へ。そのまま、ドロドロとした男女の話になるかと思いきや、そうはならないのが、芥川賞作家・鹿島田さん。物語は、男性の思いと女性の思が交互に展開します。夫婦の危機をきっかけに、「異様な記憶の蓋」をあけてしまった2人は、様々な過去の記憶を思い出すのです。2人の本心を知る読者はどちらに肩入れして同書を読み進めるのでしょうか。

 浮気を切り口に、人間の本質的な部分に迫っていく鹿島田さんの新作。「浮気」に縁がない人も楽しめる一冊だと言えるでしょう。


『暮れていく愛』
著者:鹿島田 真希
出版社:文藝春秋
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  • 紹介としては安い。  たぶんですが、引用部分からもわかるように、作者はこの記事タイトルの問いなんて、まったく通り過ぎていますよ。
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