「親子就活」は必要なのだ 〜「バブル親」再教育のチャンス〜

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2013年06月18日 10:01  MAMApicks

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いま40代後半から50代前半の、かつてバブル最高潮を学生や社会人として謳歌した人たちが、親としてちょっと面倒くさいことになっている。



彼らが指摘されるのは、どうにもこうにも「バブルという原体験が忘れられない」世代だということ。実際に経済学的にバブルと分類される時期など4年しかなかったのに、いまだに引きずる過去の武勇伝と栄光譚。「あの頃はよかった」と、オイシイ思い出を忘れられないのは、過去の恋人を想うような甘酸っぱい気持ちと同じなのかもしれない。

そんな彼らの子どもの多くは、現在高校生から大学生、新入社員のあたり。しかし親は充分に気力も体力も若く、進学や就職に口も手も出す。子離れできないのは、子どもの成功失敗と自分の人生の成功失敗が同じ延長線上にあるから。子どもの成功は親の成功、親の成功は子どもの成功でもあるってなもんである。

よく言えば責任感が強いとも考えられるが、過干渉とも言える。
どうやら、親が子育てに精神力と経済力を注ぎ込んできたために、「もとを取る」べくずっと手綱を放せないというのが本音のようだ。


そんな彼らが、大学生の子どもと一緒に就職セミナーやカウンセリングに日参すると聞き、私は「どんだけ子離れできないんだ、その親は……」と若干腹を立てつつ、ため息をついていた。

ところが、日々就活学生を相手にしているキャリアカウンセラーの友人曰く、
「違うのよ、就職セミナーやカウンセリングに親が来てくれる方がありがたいの」。

「はぁ、何で!?」と気色ばむ私に、友人は続けた。

「あのね、現在の就職活動生の親はバブルを謳歌した世代、バブル脳なのよ」。

どれだけデフレで不況で低成長でと頭を打たれ続けても、ある意味「社会人としての三つ子の魂百まで」で、いまだに自分が社会人としてすべり出した好況期のイメージで受験や就職、人生を捉えてしまう。

好景気がデフォルトの人生観から離れられない親は、現実が見えていない。
不況は「誰かが引き起こした間違い」で、好景気こそが「正しい状態」という楽観、「痛んでいない」「覚悟のなさ」。それが、子の人生の選択の場面でつい出てしまうのだ。

人生は右肩上がりである「はず」。
子ども世代は親世代よりも豊かになるべきである「はず」。

バブル派にとっては、「負け」から人生始めるなんて、ありえないのかもしれない。
自分が知っている会社以外が受け入れられない。
自分が知っている学校以外が受け入れられない。許せない。
現実から乖離した親が、現実の中でもがく子どもを、家庭で苦しめるのだ。

就活で何十連敗し、自己否定の嵐の中でもがく学生たち。せっかくカウンセリングで学生本人が自分の新しい方針を持ち、自信を取り戻しても、帰宅したとたん両親の洗脳に遭って、またカウンセラーのもとへ戻ってくる。

だから、親子のキャリアカウンセリングや就活セミナーは、
「バブル親を再教育するためのもの」。
親に現実を教え、お子さんが怠けているわけでも意識が低いわけでもないのです、と教える場なのだ。

お子さんはアホではありません、ひ弱なもやしっ子でも、いつまでもあなたを必要とする「心配な子」でもありません。ゲームやりすぎでもないし、寝すぎでもないし、漫画読みすぎでもありません。やっぱり3歳から英才教室にいれるべきだったわけでもないし、中学の時の友人が悪かったのでもありません。今の彼女がダメなわけでもありません。

世間知らずでもありません。世間を知らないのは、あなたです。

学生はもうイヤと言うほど現実に打たれ、自分を全否定し、競争とはなにか、世の中の底冷えを知っている。でも親は知らない。それを教えなきゃ、親も子も救われないのだ、とキャリアカウンセラーは言った。

アベノミクスが一瞬もたらす、浮ついた好景気ムード。そんな実体をともなわない気分は、本来「再教育の必要なバブル親」に、もう一度夢を見させてしまうのかもしれない。


河崎環
コラムニスト。子育て系人気サイト運営・執筆後、教育・家族問題、父親の育児参加、世界の子育て文化から商品デザイン・書籍評論まで多彩な執筆を続けており、エッセイや子育て相談にも定評がある。

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