「迷い猫」が可愛くて仕方ない・・・「元の飼い主」が現れても飼い続けられる?

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2013年07月01日 13:11  弁護士ドットコム

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「【拡散希望】猫がいなくなりました」。毎日のようにつぶやかれる「愛猫探し」のツイート。見るたびに、猫に愛情を注いできた飼い主の悲痛な思いが伝わり、胸が痛くなってくる。


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一方で、「どこからか迷い込んだ猫が、家に居つくようになった」という例もある。もしかしたら飼い猫だったかもしれないと感じながら、迷い猫を飼い続けることに問題はないのだろうか。



もし、元の飼い主があらわれたら、「いまの飼い主」は、その猫を返さなければならないのだろうか。それが3年も後だったとしたら、どうなのだろう? 坂野真一弁護士に聞いた。



●猫の「所有権」はだれにあるのか?



「問題なのは『所有権』です。仮に、猫が迷い込んできてから3年が過ぎていたとしても、埋め込まれたマイクロチップなどで元の飼い主の所有権が証明されてしまうと、『いまの飼い主』は猫を返さなくてはなりません」



「いまの飼い主」が、迷い猫の所有権を手に入れることはできないのだろうか?



「民法には、無主物先占(239条1項)という規定がありますが、元の飼い主が所有権を放棄していない限り、逃げた飼い猫は『無主物(所有者が存在しないモノ)』ではありません。したがってこの規定は使えません。



また、迷い込んできたわけですから、売買などの取引行為で手に入れたとはいえません。そのため、盗品であることを知らずに他人の物を購入した場合などに適用される『即時取得』(民法192条)による所有権の取得も主張できません。



ほかにも、家畜以外の動物で他人が飼育していたものを飼い始めた場合、この動物が逃げてから1カ月以内に返還請求を受けなければ、所有権を取得できる規定があります(民法195条)。しかし判例上、この場合の『家畜以外の動物』は野生動物をさすと解されているので、今回は使えないでしょう」



●逃げた猫は「遺失物」にあたる



「結論を言えば、今回のケースの猫は『逸走した家畜』(遺失物法2条1項の準遺失物)に該当します。したがって、猫の所有権を得るためには、遺失物に関する規定(民法240条、遺失物法)にしたがうことになります」



――「遺失物」とか「家畜」という言葉には違和感があるが?



「そう思われる方もいるかもしれませんが、遺失物法では、『家畜』を『人に飼育されて生活するのが通常である動物』としており、猫もこれに該当するとされています。



つまり今回は、遺失物法にしたがって、警察署長または都道府県等(遺失物法4条1項・3項)に届け出て、3カ月以内に所有者があらわれなければ、『今の飼い主』が所有権を取得できると考えます(民法240条)」



なついた猫を手放すのは辛いだろう。しかし時には、気持ちを抑える必要もある。坂野弁護士も「いったんは警察署または都道府県等に遺失物として届けるべき」とアドバイスしている。


(弁護士ドットコム トピックス編集部)



【取材協力弁護士】
坂野 真一(さかの・しんいち)弁護士
イデア綜合法律事務所 パートナー弁護士。関西学院大学、同大学院法学研究科非常勤講師。著書(共著)「判例法理・経営判断原則(中央経済社)」。近時は火災保険金未払事件にも注力。
事務所名:イデア綜合法律事務所
事務所URL:http://shonen.idealaw.jp/



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