子連れOKフェスが増えているのはなぜ?考察してみた

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2013年07月26日 10:00  MAMApicks

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7月も後半になると、巷では夏のロックフェス情報が賑やかになってくる。

そう、「夏フェス」だ。

近年は託児サービスや子連れでの参加OK(=Q&A等に子連れ参加についてちゃんと明記があるもの)を売りにしているフェスが増えてきている。

気になったので、規模の大きいフェスについて調べてみたが、目についただけで今年は「FUJI ROCK FESTIVAL」、「サマーソニック」など、10のロックフェスで乳幼児同伴OK、または託児サービス有りを明記していた。

なぜ今、こんなにも「子連れ可能フェス」は増えているのだろうか?


■日本の「元祖・ロックフェス」
日本のロックフェスの走り、そして子連れフェスの元祖といえるのが、老舗「FUJI ROCK FESTIVAL(以下・FRF)」であろう。

「子どもができたらフジロック!」というのは私の周りの音楽好きの間ではよく言われていたフレーズなのだが、実際行ってみた人の話を聞くに、乳児を連れての参加は結構厳しい。

「FRF」に限ったことではないが、野外フェスでは雨や気温の急激な変化がつきもので、豪雨でテントが浸水した人の話も聞くし、天候面でも乳児に向いていない側面は否めない。

では、小さい子どもを持つ我々はどう楽しむべきなのか?

■子連れフェス、YES? or NO?
そもそも「子連れでフェスとか来んな」という意見もネットではしばしば目にする。

ホントかどうかわからないが、某巨大掲示板などでは「モッシュピット(パンクなどのライヴで観客が押し合っているあたり)にベビーカーで入ってきた母親がいた」といった「とにかく混んでいるところにベビーカーで乗り付ける親たち」の目撃情報が見られる。

もちろん人の価値観はそれぞれだとは認識しているが、普通に考えてそんな危ないところに乳児を連れていけるだろうか。

かといって、「もっと落ち着いた曲調のを見たらいいじゃない、大人なんだから」という意見には異を唱えたい。

質問ですが、
子どもができてから曲の好みって、変わりました?

■20代と30代、音楽との付き合い方
音楽に関しては、たぶん人よりちょっと好きな方、の筆者である。

テクノ全般を得意としていたので、20代の頃、大半の活動エネルギーは深夜に放出されていた。そんな90年代後半のフェスといえば、まだ数も少なく、「レインボー2000」という伝説のイベントや、今年も開催される「WIRE」、「FRF」、そのくらいではなかっただろうか。

30を過ぎて夫と一緒に暮らしてからも、オールナイトでフェスに行くことはあったが、妊娠して初めてぶち当たった壁、それは「フェスやライヴを今までみたいに行かれない」。

■妊婦とライヴ、回避できない体の変化
妊娠中にオールスタンディングのライヴに一度だけ行った。
恵比寿リキッドルームだ。
ライヴハウスやクラブは階段が恐かったけど、夫が同伴だったので助かった。

リキッドだったら後方に階段があるし、と思ったらその日は関係者席になっており入れず、細長いテーブルにもたれて結構な長時間楽しんだ。

しかし、確実にお腹が張ってくる。そしてトイレが近い。でもトイレに行ったらこの場所に戻れる自信がないほどの混雑。

後半は尿意との戦いで、ピエール瀧が篠原ともえの前にシノラーファッションで出てきたのも膀胱を気にしながら楽しむ形になってしまい、できることなら今もう一回見たい……。

■産後は産後で…
産後も、夫が子どもを見ててくれるというので、一人でフェスに行った。その時は、横浜アリーナで「WIRE」だった。

オール(ナイト)はつらい予感がしてたので、あらかじめ車でのお迎えをお願いしておいたのだが、それ以前に乳が張ってどうにもこうにも楽しめない。

踊っても痛い、トイレで中途半端に搾乳したら余計に張る、熱っぽい気がする。負のループから抜け出せなくなって、24時過ぎにはもう帰りたくなってしまった、嫌な予感もしたし。

家についたら、当時0歳だった子どもが完全に覚醒している状態で部屋にいた。応援を頼んだ実家の母は寝かしつけに失敗していた。

こうやって、母になることはシーンから遠ざかることなのかと思い知りつつ、諦めきれないままモヤモヤだけが溜まった。

■2歳、夏フェスデビューとその極意
ちょうど見たいアーティストが多く出ることもあり、我々親子は5月に若洲公園で開催された「メトロック(METROPOLITAN ROCK FESTIVAL)」に行くことに決めた。チケットを取って家族三人でフェスに行くのは初めてだった。

ここで問題が生じる。
夫婦とも、一番見たいアーティストが同じ場合どうしたらよいのか。
二人の興味がかぶらない場合は、どちらかが子守り、どちらかがライヴという楽しみ方をすればよいのだが、二人とも同じのを見たい……。さて困った。

若洲公園には子どもの遊べる遊具があり、この時は遊具を開放していたため、後方で子どもを遊ばせながらモニタに映るアーティストをちらちら見て、耳から曲を聴いて、という過ごし方ができた。

ちょうど夫の友人夫妻も来ていたため、しばらく二家族で行動していたのだが、これがものすごくラク! 大人四人で子ども二人をゆるく見守るのなんて、普段に比べたらどうってことはない。

日中に散々走り回って、すべり台の上で踊って、女の子をナンパして、親のお目当ての時間にはもう夢の中だった我が家の2歳児。おかげさまで父と母はゆっくりとライヴを楽しむことができた。

以下、子連れフェスのポイントを実際に行った感想としていくつか記したい。

・子ども連れの時は子どもの希望と体調優先
・最前列は諦める
・車で行っていいなら、車のほうがベースキャンプを作るのにベター(都心のフェスは厳しい)
・夫婦で見たいアーティストがかぶるときは複数家族でチームを組む
・キッズエリアの場所と遊具を確認、ステージが見える場所ならラッキー
・授乳場所、おむつ替えの可否も事務局に確認を取ろう
(結局息子が野外でのオムツ替えを拒否したため、オムツが大変なことに。プールの着替えで使うゴム入りタオル等を準備するといい)
・熱中症対策、可能ならばシート、日よけグッズ、虫除けアイテムなど
(虫除けブレスなどにすると、フェスのリストバンドみたいで「おそろい!」と子どもが喜ぶ)

■預けたい、預けられない、本当は一緒に楽しみたい親たち
最初にフェスに「託児」の文字を見たのは、夢の島で開催されている「ワールドハピネス」だったと記憶している。高橋幸宏(YMO)が発起人となっている夏フェスだ。

「ワールドハピネス」はどうしても“YMOチルドレン”、つまりアラフォー以降がメインターゲットとなるので、当然子どものいる人も多いだろう。


近年、(自分もそうだが)30を過ぎてからの初産というケースが首都圏を中心に増えているように思う。社会人として一定のキャリアを積んでから30半ばにふと考える、自分の子どもを残したいと。

しかし、成人してから自由に過ごした時間が長いほど、結婚では窮屈に思わなかったことも出産後には「あれもこれもできなくなった」と嘆く。

夜の外出、長時間の単独行動、静かなレストラン、好きな音楽を聴く時間、飲み会、……etc.そして、帰宅の遅い夫。

たまには子どもを預けて気分転換しなよと言われるが、そのころにもう親は高齢なのだ。預かってはくれるだろうけど気を遣う。親の体調と、留守中の子どもに何かないかを。

……じゃあ、保育園に預ける?

認可は娯楽に行くためには預かってくれないし、短時間預かりは年度のアタマで満員。そもそも夜間は預かってくれない。

そして認証や無認可はそこそこのお値段だ。お出かけして使うお金より上回る保育料。どうしたものだろう。

こんなだったら若くて娯楽を知らないうちに出産するんだった!と思うがそれはもう別の人生を選択することなので、言ったところで始まらない。今を、今を生きなきゃという「前向きであること」が自分に圧力をかける。夜中に授乳しながら暗い部屋で泣く。

──そんな気分になった人もいるのではないだろうか。

預け先がないから連れて行く。むしろ、一緒に音楽を楽しめたらいいのに。
それはエゴなのだろうか。

■世代独特の事情が今の音楽シーンを救う?
われわれ「団塊ジュニア」と呼ばれる世代は音楽へのコミットメントが高く、そして90年代、日本の音楽シーンが活発だった時期に思春期を送った最後の世代。

近年「低迷」という表現で差し支えがないだろう日本の音楽業界も、今は“お金を一番落としてくれる層”を呼びたいはずだ。

そして“子どもの都合さえつけば多少は娯楽にお金を使える”と思っている、未就学児の親たち。

CDを売るより、ライヴをやったほうが儲かるといわれている時代、「ライヴ会場」に「子どもを連れていける環境」を作ることで現状を打破できると見込んだのではなかろうか。

この先10年で、もっと「子連れOK&託児付きライヴ」は増えるのではないかと思っている。

■どうしても越えられない壁、ナイトカルチャー
しかし実は今でも一番行きたいイベントは、深夜に行われる類のものである。
本当は「ソニックマニア」に行きたいし、「WIRE」にも行きたい。

しかしこれだけは絶対に、法律的にクリアしても道徳の観点で子連れはアウトだというのが筆者のスタンス。

いつか「イベント側が子持ちのライフスタイルに寄ってきてくれたら」と思う反面、「それじゃ若い新規顧客の獲得は無理ね」という側面もあり、自分が主催者だったらだいぶ頭が痛い問題だ。

いつかすばらしい打開策が誰かから発案されるまでの間、この件に関しては、

・日中のイベントで我慢する
・深夜のイベントは有料でいいから配信やってね♪とお願いする

残念ながらこれしかないのかもしれない。

ワシノ ミカ
1976年東京生まれ、都立北園高校出身。19歳の時にインディーズブランドを立ち上げ、以降フリーのデザイナーに。並行してWEBデザイナーとしてテレビ局等に勤務、2010年に長男を出産後は電子書籍サイトのデザイン業務を経て現在は日本テレビグループ・LIFE VIDEO株式会社のデジタルコンテンツ全般を担当。

このニュースに関するつぶやき

  • これ、親のエゴでしかいと思う… 大人でもけっこう過酷なのに…… ちびっこ死傷者がでないことをいのるわ………
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