【コラム】<子供より親が大事、と思いたい>は道理か?

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2013年08月08日 10:00  MAMApicks

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昨夜は眠れなかった。
家の2歳が39度の熱を出したからだ。

人の子の親になり11年。3人の子の発熱回数を足したらもう何十回目かの経験ではある。
でもやっぱり眠れないし、慣れもしない。
「たかが子どもの熱、余裕しゃくしゃく」なんてことはない。


子どもの具合は急転直下に悪化する。「あれ?」と思った40分後には救急車に同乗していたことだって実際にある。
まさに「一寸先は闇」であり、「危機一髪」。「このタイミング、お母さんお手柄だったね」と言われた時には、安堵と恐怖で膝が笑ったものだ。

それでも、「この程度で連れてくるな!」とか「なんでこんなになるまで連れて来なかったんだ!」と真逆の怒り方を、医師からされることもあった。

大騒ぎするな、しかしナメるなとは何という二律背反、「あたしゃ小児科医じゃねえんだよ!」「クリティカルな状態かそうじゃないかなんて見分けつかねえよ!」と泣きながら(家で)キレたことも、もう何度あるだろうか。

信頼できる医師から、「いいんだよ、親の勘を信じて決めて」と言ってもらえたのが救いで、とりあえず勘だよりに乗り切った11年であった。……閑話休題。


で、だ。

そうなるとやっぱり、高熱の子を前には、夜もおちおち眠ってはいられない。見張って観察していないと不安で。

でも正直なところ、40歳目前の筆者にとって、もう徹夜は辛い。ロングスリーパーゆえ、次の日使い物にならないダメージを受けてしまう。

この寝不足が3日も続けば、子どもの病気も貰いかねない。子どもの病中において母の睡眠の確保は喫緊の課題なわけだ。

しかし多くの親御さんはご存知のとおり、具合の悪い子どもの寝ぐずりは通常域ではない上、子どもが複数いるため感染リレーした日には完全に詰むのである。


そんなこんなで思うのだ。
母親にとって、「密室育児」や「孤育て(狐ではない、孤独の孤)」などによるメンタルな問題発生それ以前に、まず追い詰められるのはどちらかといえば、フィジカルな問題、不調……授乳による栄養不足や慣れない赤ん坊との生活による緊張性の睡眠不足……なのではないだろうかと(もちろんお産そのものによるダメージ、妊娠期間を通じてのダメージが最初にある。それに追加してということである)。

我ながら「親ってヤツぁ」と他人事のように感心してしまうことに、眠っていても、子どもが「げほっ」とひと咳しただけでパッと目覚めてしまうことがある。寝言で「イヤ!」と一言いっただけでも起きられる。無意識的に「アンテナを張り」続けている所以ではないかと思う。

筆者宅では10歳筆頭に、3人の娘が両親と同じ寝室で眠っている。だからその「げほっ」は3人の誰であっても、母である筆者は起きてしまう(夫はわりと起きない)。

こういう「アンテナ」を負担に感じて親子別室就寝にしている家庭も知っているが、けだし道理だと思っている。我が家も間取りが許すならば検討したいのだが、いかんせんスペースに余裕がなく実現していない。


<子供より親が大事、と思いたい>と言ったのは太宰治だったかしら、
あれもだいたい道理じゃないかと思っている。


(母)親が倒れないことを第一に考えないと、容易に一家総倒れになりかねないのが年少の子育て家庭というもので、そのダメージを予見でき勘定できるのならば、とりあえず「そこ」を狙って打つ手はあるはずなのだ。

そう。打つ手はある……あるはずなのだが、しかし。あまり「母親のフィジカルな健康ありき」という意識は、世間一般には捉えられていないものなのか?

熱中症が気合いで治るわけではないように、物理的な睡眠不足、子どもに伝染された各種感染症は、「母親なんだから」という精神論だけで放逐できるはずがない。

8時間ぶっ通しで眠ったり、自分が台所に立つことなく消化の良い食事を少量摂るなど、当たり前に養生することで少しずつ回復できる類いのことである。そんなの当たり前? 御意、当たり前な話だと思う。筆者もそう思う。

「大変そうな妻に対する共感」とか、「密室育児への理解」とか以前の話、目の前に具合の悪い人がいたら面倒を見てあげる、と、ただそれだけの話なのだが。


そういう、人として?当たり前な「看病」の範疇(もちろん、その間、子どもの世話を担ったり家事をこなしたりすることを含めて)ですらも、放棄しているとしか思えない夫族が、世の中にはまだ少なくないのだろうか?

「私が熱を出しているのに夕飯まだ? と夫に言われ殺してやろうかと思った」などという愚痴(呪い?)話は、人生案内、インターネット問わず枚挙に暇がなく、橋田壽賀子のドラマじゃあるまいし今どき……と思いたいものの、存外冗談ではないらしい。

もしかすると……。書きながらちょっと怖くなる。

そもそも、そんな「夫族」は、そんな意識も覚悟もないまま結婚したり、親になっているのだとしたら???
「ただそれだけ」どころでなく「そんな発想もなかった」のだとしたら???


先月からの不調を引きずり、寝不足と微熱と心労でヨレヨレのまま朝を迎えた筆者を見て、その日、夫は2歳の受診と子どもたち3人の世話と家事、おさんどんをすべて執り行ってくれた。おかげで今回は倒れるところまで行かずに済みそうだ。先月は出先で倒れてしまった。

「大丈夫」と無理するのは美徳ではない。白旗は早めに上げよう。


とまれ、育児は体力勝負。

筋トレでもするかなあ。でもその前に、夜なべをやめて、早寝かな……。

藤原千秋
大手住宅メーカー営業職を経て2001年よりAllAboutガイド。おもに住宅、家事まわりを専門とするライター・アドバイザー。著・監修書に『「ゆる家事」のすすめ いつもの家事がどんどんラクになる!』(高橋書店)『二世帯住宅の考え方・作り方・暮らし方』(学研)等。10歳6歳2歳三女の母。

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