TPP参加は国民生活にプラスか?

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2014年01月28日 15:20  JIJICO

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関税を撤廃し貿易を自由化、経済発展を目指すTPP


日本・米国を中心とした、環太平洋地域による経済連携協定「TPP(環太平洋連携協定)」。基本的に関税撤廃で貿易を自由化して経済発展を目指すものです。日本は少子高齢化などで国内需要が減少していますが、今後、TPP参加国とつながりを深めることで、需要が伸び経済成長できる可能性もあります。ただ、日本は途中参加のため、すでに加盟国が合意した項目は再協議できない状態です。


食料品や酒類、高級ブランドバッグ、皮革製品などは値下がり?


TPPは、物品だけでなく幅広い分野が対象になっていて、今後100%の関税撤廃が原則になっています。日本政府は、米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の5項目を「聖域」としていますが、関税が完全に撤廃されなくても、TPPの影響で関税率が大きく下がることも考えられます。


日本の食料品に関する関税は、小麦→65円/kg、米・玄米→402円/kg、砂糖→35%、牛肉→50%、コーヒー→20%、ミルクやクリーム(脂肪分10%以上)→25%+747円/kg、ホイップクリーム→30%、ヨーグルト→35%+1076円/kg、チーズ→40%などです(同じ製品でも種類・部位・加工などの違いで関税率は変わります)。


大きな関税をかけている食品も少なくないため、今後、関税が撤廃されると食料品は全般的に値下がりするでしょう。また、現在はスパークリングワイン201.6円/ℓ、毛皮40%のほか、皮革を使ったバッグや財布は10%〜20%程度かかっていて、酒類、高級ブランドバッグ、皮革製品なども安く購入できるようになります。


自動車に関しては、輸入車の関税はすでに撤廃されているので、TPPに参加しても外国産自動車の価格は下がりません。しかし、日本からアメリカなどに輸出する際には関税をかけられているので、それが撤廃されれば、日本の自動車の輸出量増加が見込まれ、景気回復の後押しになると考えられています。しかし、アメリカ側は関税の即時撤廃に同意していないので、撤廃までは時間を要するでしょう。


一方、農業・酪農業への打撃や医療・保険制度の崩壊が懸念


家計にはメリットのあるTPPですが、日本の思惑通りにはいかず、様々な問題も取り上げられています。食料品の関税撤廃に向け強化対策を打ち出してはいますが、農業・酪農業の継続が難しい人が増えることも予想されます。従事者が少なくなり、収穫量が減った分を海外からの輸入に頼ることになると、「貧困国に食糧が行き渡らなくなる」「世界的な食糧不足に拍車がかかる」といった意見があるほか、遺伝子組み換え食品や、利用する農薬などが緩和される点も危惧されています。


さらに、医療・保険制度の完全自由化が求められ、現在のように「手厚い医療制度を受けられなくなる」と警鐘を鳴らす人もいます。薬の特許期間が延長されるため、ジェネリック薬品が出にくくなる恐れもあります。「お金がない人は治療を受けられない」。そんなアメリカのような国になる可能性すら指摘されているのです。


TPPに参加してしまうと、脱退は困難に


また、TPPに付随してISDS条項を結ぶことになります。ISDS条項を導入すると、投資先の国の規制変更などで損害を受けた投資家は、相手国政府を提訴することができるようになります。今までも多くの国が訴訟を起こされ、国際機関の仲介により、多額の損害賠償の支払いを余儀なくされています。たとえば、「危険な農薬Aを使った農作物の輸入を禁止する」といった条約を作り、他国の企業の商品が輸入できなくなると、その企業から「提訴される」ということです。このように、TPPに一度参加してしまうと、他国の企業から多額の損害賠償を請求されることが予想され、脱退は困難なものとなります。


現在、TPP交渉の妥結見通しが立たない状況ですが、今後どこで妥協をするのか目を光らせていきたいところです。



(佐々木 茂樹・ファイナンシャルプランナー)

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