子育てをしやすい空気づくりは自分たちから

3

2014年01月29日 10:31  MAMApicks

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

MAMApicks

写真
子育てをしにくい空気のある社会だ。
ある出来事をきっかけに、そう悲しくなった。
しかし後に、私自身がその空気をつくりだしている一人だったと、反省することになる。


ある日、1歳半になる息子をベビーカーに乗せ、電車に乗っていたら怒られた。
「ベビーカーで電車に乗るのは迷惑だ。私が子育てしていたときは、ベビーカーは大きくなかった!」
乗り込んできたときから不機嫌だったその女性は、私をにらみつける。
「すみません……」
頭を下げながら、目に浮かんだ涙を隠すようにうつむいた。

昨今、子連れでの乗車に好意的でない人がいるのは、Twitterを中心にイヤというほど見かけていた。だから、通勤ラッシュの時間をはずし、子どもが昼寝する時間帯に出かけた。

乗車前に運良く息子は熟睡。車内はベビーカーが存在しても、袖が触れないくらい空いていた。これなら迷惑はかからないだろう、そう安心して一息ついていたときの出来事だった。

―― 細心の注意を払い、もうこれ以上とれる対策はないなかで浴びた、怒号。

腰に軽いヘルニアのある私は、抱っこベルトでの長時間の移動は不可能だ。
「子連れは電車に乗るなということなのか?」
途方にくれた。

「なんて子育てのしにくい空気のただよう社会なのだろう……」
ネットでの子育てに厳しい声がこだまして、まわりの空気が重く感じた。


だれかに聞いて欲しくて、すぐさまこの出来事をFacebookに書き込んだ。
同情の声はあった。
一方で、
「公共の場で子どもが騒いでいても、当然のようにしてほっておく親たちがいる。」
という声もあがった。

この声を眺めながら、あることがわかり、ハッとした。
子どもを育てている渦中にある親たちは、一部の厳しい意見に神経質になっている。逆に子どもとは関係のない生活を送っている人たちは、一部のマナーのよくない子育て中の親たちに辟易している。

一部の特別な事例をあげて、対立構造を生んでいた。

―― 違う、対立したいわけではない。

そして、気がつく。
こんなネガティブな出来事がネット上にあふれていたら、子育てをしやすい空気になるだろうか? もしかして、子育てをしにくい空気をつくりだしている一人なのかも、私。


振り返ってみれば、お腹に命を宿してから、息子を育てている2年ちょっとの間、たくさんの人に助けられて、ありがたい思いをしてきた。

お腹が大きかった妊娠中、小学生くらいの男の子が、電車で席を譲ってくれた。
自分の子も席を譲れる子に育てよう、お腹をさすりながら決意した。

息子を背中に持ちあげ、おんぶ紐を装着しようとしたら、息子が暴れて落ちそうになった。
直後、「手伝ってもよいですか?」そうスマートに告げ、息子を持ち上げてくれたサラリーマンがいた。

親切な人がいる。一日中、思い出してはうれしい気持ちになった。

ベビーカーを押しながら、重いドアを開けられずに困っていた。
ガラスドアの向かい側やや遠くに、高齢の女性がいるのが見えた。彼女はよろよろ走ってきて、「すぐに気がつかなくてごめんね」と言いながら、腕をプルプルさせドアをあけてくれた。こちらが手助けしたいくらいの高齢者が、謝りながら助けてくれる姿勢に感動した。ありがとう、長生きしてねおばあちゃん。

子育てをしている自分に温かい人たちは身近にもいる。
子連れで参加しやすいように、日中に個室や広場、家などで遊ぶ企画してくれる友人たち。「子どもより遊んじゃうよ〜」そう冗談めかして、息子と遊んでくれる友人たちもいる。彼ら彼女らがいなければ、育児で孤立感をつのらせ、つぶれてしまっていただろう。

自分に対してだけではない。
東日本大震災の直後、天井が落ちるほどの揺れで、どうなるかわからない状況の中、妊婦さんのために、まっさきに横になりやすい場所を作っていた前の職場の人たちの姿。

妊婦や子どもを大事にする光景をたくさん見てきた。


子育てをしていて、人から受けた嫌な思いをしたことが少しあったとしたら、人に助けたられたことはそれ以上にある。老若男女、子どもを大事にする人たちはたくさんいるのだ。

子育てに好意的ではない声をネットで見過ぎて、疑似体験した気持ちになっていた。たくさん助けられてきたのに、ちょっとの嫌な思いを、ネットに書き込んでいる自分……。

子育てをしにくい空気を自分からつくっていた?

悲しいことは悲しい。誰かに伝えると楽になる。でも、ソーシャルメディアには、手助けしてもらってうれしかったことのほうを書こうと決めた。

日本には、空気を読もうとしてしまうマジメな国民性がある。子育てしやすい空気がただよえば、躊躇していた人たちも、自分もと動き出し、よい循環が生まれそう。

もちろん、みんな自分のことで精一杯だ。だから、少しでも助けられた話を共有して、うれしい気持ちを疑似体験してもらえたら。それだけでも、誰かの役に立っているかもしれない。

子育てをしていて、まわりに助けられた自分の体験を語りたい。
子育てのしやすい空気のある社会は、そこから始まるのかもしれない。

福井 万里
大学卒業後、大手システムインテグレータでSEとして10年間勤務も、東日本大震災を機に、本当にやりたいこと(書くこと)を生きがいにと決意し退職。2012年に結婚&長男を出産するも2013年に離婚、シングルマザーに。ライターとして活動を開始。

このニュースに関するつぶやき

  • 乳母車は、抱っこ紐で子育てしている親から見ても、扱いが悪い母親が多いよ…。昇降機でも扉の前につけ、降りる人に避けさせて…。電車でもこれがある。乳母車の教習所が必要と思う。それと、逃げ道は諦めを含め、自らの心を大らかに����ʴ򤷤����
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(1件)

ランキングライフスタイル

前日のランキングへ

ニュース設定