弁護士が教える隣人トラブルの解決策

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2014年02月04日 17:10  JIJICO

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まずは隣人とのコミュニケーションを円滑に保つことが必要


隣人トラブルは、特にマンションやアパートといった集合住宅の住人にとって、しばしば悩みの種となります。こういった隣人トラブルを未然に防ぐために必要なのは、まずは何よりも普段から挨拶を交わすなどのコミュニケーションです。隣人トラブルと言っても、その程度はさまざまで、多くの場合は受忍限度の範囲(許容範囲)内におさまります。ある一定の程度を超えてはじめて法的な意味での「不法行為(違法行為)」という範ちゅうに入ってくるわけですが、隣人とのコミュニケーションを円滑に保つことで、この受忍限度は大きく引き上げられるでしょう。


もし、こういった努力にもかかわらず、隣人トラブルが起こってしまったら、まずは感情的にならず、話し合いによって解決を目指します。それが難しければ、当事者以外の第三者を間に入れた方が良い場合があるかもしれません。弁護士は「公平中立な第三者」とは言えませんが、客観的な視点から両当事者の意見をまとめるために有効です。また、仮に隣人トラブルの相手方が全く話し合いに応じないような場合は、弁護士を交渉の窓口として入れることで、その相手方の反応が変わることがあります。


内容証明郵便を送る場合は弁護士名で送付する方が効果大


さらに、隣人トラブルの相手方に対して内容証明郵便を送る場合は弁護士名で送付する方が効果的です。弁護士名で内容証明郵便を送付することにより、相手方に「このまま話し合いに応じないでいると、裁判を起こされるかもしれない」と思わせることができるのです。この内容証明郵便は、その郵便を出した事実、およびその郵便の内容を公的機関である郵便局が証明するというものですので、後日訴訟になった場合にはトラブルの内容の有力な証拠となります。ただ、この内容証明郵便は、使い方によっては、新たなトラブルとなる危険性をはらんでいます。例えば、相手方に話し合いに応じる姿勢が見られるケース、今後も相手方との関係を維持する必要があるケースでは避けるべきでしょう。


また、民事調停という、専門家(裁判官と2名以上の調停委員)が間に入り、両者を調整する制度があります。調停が成立すると、強制執行が可能になる等の確定判決と同様の効果を得ることができます。この制度は、通常の訴訟に比べて、相手方との関係が壊れる可能性は高くありません。両者が話し合って合意した内容が調停調書になるので、この内容が実現される蓋然性は高いといえます(ただ、調停はあくまで話し合いですから、相手方がそもそも裁判所に出頭しなければ、成立しません)。


訴訟もあるが、隣人であることを考慮すると話し合いが望ましい


そして、少額訴訟手続きという制度もあります。これは、60万円以下の金銭の支払いを請求する訴訟を提起する際に求めることができる特別の訴訟手続きで、原則として審理を1回のみで終わらせて直ちに判決を行う手続きです(相手方が応じず、通常の訴訟への移行を求めた場合や、少額訴訟によって出された判決に相手方が異議を申し立てた場合には、通常の訴訟に移ることになります)。


このほかに、通常の訴訟を提起し、そこでの和解を狙うという方法もあるかとは思います。ただし、訴訟提起という形で一度宣戦布告したという事実は消えませんし、お互いに引くに引けない状況になっている以上、和解も簡単ではないでしょう。今後も顔を合わせる可能性のある隣人であることを考慮すると、やはり話し合い(調停も含みます)での解決が望ましいのではないかと思います。



(名畑 淳・弁護士)

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