限定公開( 4 )
TwitterやFacebookなどのSNSが普及するのに伴い、世の中に向けて簡単に情報発信ができるようになり、芸能人などの目撃情報も手軽にインターネット上で投稿することが可能になりました。しかしながら、このような投稿に全く問題がないわけではありません。
まず、芸能人といえども個人の私生活の平穏は保護され「私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利」がありますので、このような投稿によりプライバシーの侵害といった問題が生じます。法的保護を与えられる私生活上の事柄とは、「一般人に未だ知られておらず、公表されれば私生活上の事実又はそれらしく受け取られるおそれのある事柄で、一般人の感受性を基準にして公開を欲しないであろうと認められるものであること」が必要となります。
この点に関し、芸能人の場合、一般人からその言動や私生活について興味や関心を抱かれるであろうことがもともと予想される職業のため、そのような職業に就いた時点でプライバシーの一切を予め放棄しているとの考え方もあります。しかし、そような考え方は極端に過ぎるものとして今のところ受け容れられてはいません。ただ、一般的には「私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利」を有する芸能人であっても、自らの私生活に関する情報に商品価値を見出し、これを利用するといった側面もあるでしょう。よって、ある程度の範囲においては、プライバシーが公表されることを予め承諾しているということもできるのです。そうすると、そのような事項についての情報が公表されたところで、プライバシーの侵害といった問題は生じ得ないということになります。
しかし、一般人による情報発信は、マスコミによる報道とは異なり、プライバシーの侵害といった問題は生じないなどと誤解してはいけません。一般人であろうとマスコミであろうと、芸能人のプライバシーを侵害した場合には、いずれもその責任を問われるのです。マスコミによる場合には、プライバシー情報が拡散しやすく、拡散も早いといったことから、一般人による場合と比較して慰謝料の額も高額となっておりましたが、SNSの普及によって、ややもするとその差はなくなってくるかもしれません。そうだとすると、何も考えずに興味本位でSNSに芸能人の目撃情報を投稿してしまうと、高額な慰謝料の支払いを求められる可能性がありますので、芸能人にも一定のプライバシーがあること肝に銘じておきましょう。
なお、芸能人のプライバシーを侵害したというだけでは、民事上の責任が生じるにとどまりますが、さらにその芸能人の社会的評価を低下させるような場合には、名誉毀損となり、刑事罰の対象となることにも注意が必要です。
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