大人のための「ネット依存」克服法

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2014年02月10日 09:40  JIJICO

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中高生だけじゃない。大人の生活にも入り込む「ネット依存症」


近年、急速なインターネット環境の拡大や高速通信網の整備、スマートフォン・タブレットの普及に伴って「ネット依存症」という言葉を耳にすることが増えました。「ネット依存症」とは、過度なインターネットへの依存によって、日常生活に支障をきたしている状態です。


この「ネット依存症」は中高生の間で大きな問題となっており、2013年に発表された厚生労働省研究班の調査結果では、「ネット依存症」の中高生は全国で51万8千人に上るとされています。中高生の「ネット依存症」は様々なメディアで取り上げられていますが、今やこの問題は大人の生活にも大きく入り込んでいるのです。


インターネットは、知識や情報を得たり動画や音楽を楽しんだり、また、SNSなどを用いて遠方の友人と連絡を取り更に全く知らない人と出会うこともできる便利で刺激的な媒体です。しかし、便利で刺激的であるが故に現実社会よりも容易に快楽や高揚感を得ることができ、それらを求める欲求が全てにおいて優位になるとネットから離れることができず、ついには「依存」の状態に陥ります。


他者と関わる頻度が少なくなり、「引きこもり」や「出社拒否」に


「ネット依存」の症状として主なものは「自分の意思でネットを中断することができない」「ネットに費やす時間が生活の大半を占め、社会生活に影響が出ている」「ネットをしていないと不安感や焦燥感に襲われる」「ネット上での出来事と現実社会での出来事の区別がつかなくなる」などです。これらの症状の結果、最も問題となるのは現実に他者と関わる頻度が極端に少なくなることです。


人は他者との関わりを全く持たずに生きていくことはできません。子どもの頃から両親や友人、社会に出れば上司や後輩、取引先など、様々な他者との関わりや出来事から多くを学び成長していくものです。しかし、インターネット上ではSNSやオンラインゲームなどの仮想社会の中で他者との関わりが成立してしまい、それは多くの場合、現実社会よりも刺激的であり、困難な問題や失敗を容易にリセットできるので、行動や発言に責任もかかる現実社会を敬遠しがちになり、結果として「引きこもり」「出社拒否」「コミュニケーションの障害」などが起こるのです。


「依存症」は「否認の病」。治療意欲は低ければ問題は長期化


現在、この「ネット依存症」を精神疾患として診断する国際的診断基準は確立されておらず、国内において治療を行う医療機関はとても少ないのが現実です。現状「ネット依存症」の治療克服には薬物療法は行わず「カウンセリング」「認知行動療法」などの心理療法が有効とされています。また、自助グループによるグループワークも各地で行われています。


「ネット依存症」の本人や家族にできる取り組みとしては以下の通りです。


1.ネットに過度な時間を費やすことの害を明確にする(紙に書く)
2.ネットに費やした時間を仕事や勉強・交友関係に使っていたら、どれだけの益が得られたかを考えてみる(時間は有限である)
3.ネット使用のルールを決める(時間の制限・就寝前1時間はネットを使わない)
4.ネット以外で楽しめる趣味を探す


この様な取り組みには本人の依存から離脱するという意思が必要です。しかし「依存症」は「否認の病」とも言われており、本人が「やめようと思えばすぐにやめられる」「自分より長時間使っている人もいる」「誰にも迷惑はかけていない」などと考え、自分自身の問題と捉えないケースが多く、本人の治療意欲も低いので問題は長期化することになります。


このような場合は家族や周囲の働きかけが重要となります。周囲が上記のような取り組みを本人に促し、僅かでも本人に問題意識が起こればカウンセリングルームや医療機関などへの受診を促してみましょう。



(西尾 浩良・心理カウンセラー)

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