PMS中の子育て 〜勇気をもって母親をお休みしてみる〜

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2014年02月12日 10:00  MAMApicks

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あれ、なんでこんなに子育てがつらいのだろう。
あっそうか、アレが始まったのだ。

月一回の憂うつな期間に突入した。生理ではない。生理前の、何をやっても何だかダメ、戦闘力がゼロに近くなる状態のことだ。

生理前の精神面の不調には「PMS(月経前症候群)」という名前がついている。生理前の数日間、イライラしたり、普段だったら普通に受けとめられることをどうしようもなく落ち込む。


脳から鬱(うつ)と似た作用のホルモンがでる影響でおきるらしい。小さじ一杯もないホルモン物質のせいで、起きていることの受け取り方が180度違う。

人も動物だ。動物の生態として、排卵期に気分が興奮しやすくなるのはわかるとして、生理前に気分を鬱々(うつうつ)させて何の得があるのだ。そんな疑問を脳に問いかけ、何も返ってこないポンコツさにさらに落ち込む期間である。

筆者には1歳を過ぎた息子がいる。1歳の断乳と同時くらいに生理が再開し、それと同時にPMSも仲良く手をつないでやってきた。

PMS期間の子育てはつらい。
息子のことは、暇をみつけては「好き好き好き」といいながら、食べんばかりにハグするくらい、大事にしている存在だ。けれども、息子が床に自ら作り出した「尿たまり」にダイブしたり、1時間かけて作った食事を星一徹ばりにひっくり返したとき、普段だったら人に話せる面白いネタができたと笑って済ますが、PMS期間中はコブシを握りしめつつ、涙を流しながら応対する。

筆者が独り身でサラリーマン生活の際、PMS期間は仕事をやすませてもらったり、よく休憩をとっていた。PMS専門外来の扉をたたき、点滴を打ってもらったときもあった。

確かに楽になるのだが、栄養ドリンクの効く期間が多少長くなった一時的なもの。お金もかかるし、何よりも、定期的に通うのがわずらわしくなって辞めてしまった。ピルも試したが、飲みはじめの不快感(吐き気やだるさ)が強く、こちらも合わなかった。


さて「PMS」「子育て」で検索してみる。多くの人が苦しんでいることはわかる。なかには、自分がPMSという症状をしらずに、一時的におとずれる「子育てがつらい」自分を長年責めてきたという人もいた。

PMS中の子育ての対処法として、「トイレに行って気分転換したり、可能であれば、一時保育に預けたり、パパに子どもを看てもらおう」とある。

トイレに行ってみた。が、息子は後ろからついてきた。意味がない。
というか、トイレに行ったくらいでこの鬱な気持ちはとれやしない。家の近くの一時保育は1ヵ月前までに予約が必要だ。すでに離婚している筆者としては、パパに頼むことはハードルが高すぎる。完全に詰んでしまった……。

さて、どうしよう。
独り身でサラリーマン生活のときは、あまりにひどい時に限るが、仕事をお休みさせてもらっていた。そうだ、母親をお休みすればいいのだ――

休むといっても、息子を放置してしまったらネグレクトになってしまう。徹底的に、物理的には手を抜くのだ。食事はできあいのモノ、息子には好きなDVDを見せて休憩する。

絵本の読み聞かせや子どもへの話しかけも、気持ちに余裕があるときだけだ。好きなモノを食べ、読みたい本を読み、好きなお笑いで笑う。日中はベビーカーで遠出をし、小学校の校庭ふたつ分はありそうな広場に息子を放牧する。精神的にも休む。母の顔は、もうない。浮かない表情を見た息子の心理面が心配なので、マスクをした。

そして再び開業(血がでるまで)するまで、母親は閉店ガラガラ、シャッターを閉じる。なお、Facebookのたぐいは見ない。友人の誰かが、美味しいものを食べ、わくわくする場所にいて、すばらしい母親の顔を披露していると、自分のダメさ加減とともに、他人の芝生が青々と燃え盛り、ココロがボヤさわぎをおこしてしまうからだ。

……といっても、後ろめたさが残る。後ろめたさの原因は何なのだろう?

「母親としてあるべき像」と今の自分との乖離だ。

私の母は、家族全員の家事を一手に引き受け、自分の楽しみは一番後回しにする人だった。自分の母親しか知らないので、母親のあるべき像の「基準」は、自然とこの像になる。今自分のやっていることは、自分の楽しみを最優先させ、家事は必要最小限、といった母とは真逆のことだ。もはやこの「基準」を下げない限り、後ろめたさは消えないだろう。


基準をコントロールする。かつてサービス業の職場で上司に言われたことを思い出す。

その上司はおそろしく仕事ができた。噂では、数々の大企業のお客様から、我が社に来ないかという誘いがあったらしい。入社数年目でややお客様至上主義(今思うと顧客の奴隷……)だった自分に、彼はこう注意をしてくれた。

リンゴにはリンゴの値段がついている。顧客へのサービスにも値段をつけている。あなたがサービスしすぎた内容を、顧客はその値段だと勘違いし、「基準」として意識する。次の担当者が普通のサービスをしても、顧客はサービスの質が落ちたとがっかりする。次の担当者側は、無理してサービスしないと満足してもらえないから苦労する。あなたがやっていることは、顧客、次の担当者、両方にとって不幸なことなのだ。基準を高くしてはならない。

この話にあてはめると、息子は生をうけて1年ちょっとの間に、さまざまな基準づくりをしているはずだ。例えば、自分がどれくらいの音量で泣けば母親が駆けつけてくれるのか、日々試しながら「基準」を作っているような気がする。

それに対して、私が自分の楽しみを一番最後にして、いつでも満足させてくれる母親としての「基準」を息子に与えてしまったとしたら……? そう考えると、息子と次の担当者、両方が苦労するのだ。

勘が良い方なら、「次の担当者=息子の結婚相手」と考え、息子と息子の結婚相手が困る、と思われただろう。いくら「基準」を高くしても、根っから楽したい手抜きママなので、その心配はいらない。

「次の担当者=明日の私」だ。息子にとっての母親像の「基準」が高くなると、そうでない母親になったときに辛く感じるのではないか。そう、息子のためにも、これからの自分のためにも、基準は高くなくていい。

だから私は、PMSで不調なときは、勇気を出して母親をお休みしてみる。
子どものためにも、自分のためにも。

福井 万里
大学卒業後、大手システムインテグレータでSEとして10年間勤務も、東日本大震災を機に、本当にやりたいこと(書くこと)を生きがいにと決意し退職。2012年に結婚&長男を出産するも2013年に離婚、シングルマザーに。ライターとして活動を開始。


※編集部より(2014/2/13 18:00追記)
当初の本稿において、
「ピルは脳に妊娠状態と思わせて生理をとめる。実際、本物の妊娠中はつわりがひどく一日中吐いていたことを考えると、まぁそういう体質なのだろう。」
というくだりがございましたが、ピルの効果に関して正しくない表現、とのご指摘を読者の方よりいただきまして、上記の内容を本文より削除させていただきました。謹んでお詫びの上、訂正させていただきます。

このニュースに関するつぶやき

  • あなたがサービスしすぎた内容を、顧客はその値段だと勘違いし、「基準」として意識する。←これ本当にそう思う!やらなくていい仕事をどんどん引き受ける人が居ると「○○さんはやってくれたよ?」って言われて困ります。
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