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現在、安倍首相は、会期中の通常国会中において、これまで憲法上行使ができないとされてきた「集団的自衛権」について、行使容認の方向に解釈を変更することを視野に入れています。しかし、このいわゆる「解釈改憲」とは別に「憲法96条改正」を行うことへのこだわりも捨ててはいないようです。
憲法96条というのは、憲法改正手続きについて定めた条文です。この条文によると、憲法改正は、�ヽ撞脹 覆垢覆錣曾圧脹，隼乙脹 砲料躓聴�の「三分の二以上」の賛成で、国会がこれを発議し、�△修慮紊旅駝嬰衂爾砲�いて、国民の過半数の賛成による承認を経ることが必要とされています。安倍首相は、この「三分の二以上」という要件を下げることで、憲法改正を容易に行えるようにしようというわけです。
憲法改正が容易になれば権力に対する歯止めとしての用をなさない
確かに、憲法改正のハードルがあまり高すぎては、急速に変化する現実の社会との乖離が広がりすぎてしまうことが考えられます。しかし、「憲法96条改正」反対論者は、「憲法は『国の最高法規』なのだから、高いハードルを設けて改正に際し慎重に議論すべきなのは当然であって、もし『過半数』にまで下げてしまえば、一般の法律の改正と変わらないことになり、政権交代が起こる度に憲法改正が可能になれば、権力に対する歯止めとしての用をなさない」と主張します。
安倍首相は、「国民の60〜70％が改正したいと思っても、国会議員のたった三分の一を少し超える人たちが反対すれば、指一本触れることができないのはおかしい」という言い方を多用します。一見、もっともなようにも聞こえますが、具体的に憲法のどの条項をどのように改定するかという提案権があるのは国会（そのメンバーである国会議員）であり、あくまで国民はその提案に賛否の意思表示ができるにすぎず、レベルの異なる話です。
「憲法96条改正」もまだまだ時期尚早？
安倍首相は、第一次内閣の際に「国民投票法」を成立させ、憲法改正の手続面での整備を一歩進めた実績があります。しかし、「憲法96条改正」の議論は単なる手続き論に収めることは難しく、憲法改正のいわば「本丸」の議論とは切り離せないように思います。本丸とは、例えば「公の秩序」による人権の制約を容易に認めるか否かといった観点からの議論、あるいは再軍備を可能にするか否かといった安全保障の議論です。これらの議論が国民の間で成熟したとは言えない以上、「憲法96条改正」もまだまだ時期尚早ではないでしょうか。
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（名畑 淳・弁護士）
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