「リストラをしたら企業に助成金が支給される」。本当にそんなことがあるのかと不思議に思う人もいるかもしれません。従業員を転職させる企業に国がお金を出す「労働移動支援助成金」は、これまでも制度としてありましたが、この3月から大幅拡充されることで、より一層の注目を集めています。
安倍首相は、日本を世界で最も働きやすい国にしたいという思いがあり、その労働政策は、昨年6月に発表された「日本再興戦略」において基本的な考え方が示されています。そこで最初に掲げたのが「失業なき労働移動の実現」です。雇用の流動化を目指す中で、「労働移動支援助成金」は、その後押しをすることにつながると政府は考えているのかもしれませんが、「雇用が悪化してしまうのではないか」など、有識者の間でも問題点を指摘している人が多いようです。
今回、拡大支給されることになった「労働移動支援助成金」ですが、2013年度の予算が2億円だったのが、2014年度予算では301億円と150倍にもなっており、その本気度が見て取れます。労働移動支援助成金は、企業が再就職支援会社に払う費用を、転職者1人につき最大60万円(今までは40万円)まで補助する制度となっています。
転職が成功しなくても、従業員の転職先探しを再就職支援会社に頼めば10万円支給されるということで、かなり太っ腹な制度といわれています。利用できる対象企業も、今までは中小企業だけでしたが、今回は大企業に広げたこともあり、利用する企業は増えることになるはずです。
業績不振の産業にリストラを促し、人手不足の「成長産業」で働く人を増やすためには、このような助成金を支給する方法は一つの案としてはいいと思います。しかし、リストラを実行しても、その後、労働者が政府の思うように成長産業の企業に再就職が決まるかというと決して簡単ではありません。そして、リストラの対象となった人も、再就職先の候補である成長産業の業種や職種に魅力を感じない場合もあると思います。また、年齢が高くなればなるほど、環境の変化に順応できる人は少なく、なかなか転職の決断をできないものです。
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もちろん、受け皿となる企業の賃金なども重要な要素になり、今までと比べて賃金が低くなることも多いはずです。そうなると再就職支援会社の努力があったとしても、いまいち効果があらわれず、結果的に雇用が悪化してしまう可能性もありえます。
雇用が悪化するようでは本末転倒です。いずれにしても、雇用流動化の受け皿となる医療・介護や環境、ITなどの産業が、働き手にとって魅力があるようにしっかりとアピールしなければなりません。政府としても、技術面などを含め支援体制をもっと強化していく必要があるでしょう。
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