「がんと生きる」お金の備え

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2014年03月07日 13:10  JIJICO

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働くがん患者、全国で32万5000人に


今や2人に1人が、がんになる時代。いつ自分が、がんを患うかわかりません。先日、新聞などで「働くがん患者、全国で32万5000人に」というデータが発表されました。がんは、いまだ日本人の死亡率トップですが、医療技術の発達により、診断されてから5年後に生存している割合は6割近くまで上昇しています。逆に言えば、社会に占めるがん治療中の人の割合が増えてきている、ということです。


一時給付金がもらえる保険への加入が有効


がんの治療については様々な考え方がありますが、「働きながら治療をする」となると、「在宅での抗がん剤・ホルモン剤などの治療」をメインにという選択肢を選ぶ人が多いと思います。がんの治療は長期にわたる可能性もあるので、生活費・治療費などを貯蓄で補うのが難しい世帯も出てくるでしょう。そういう時に有効なのが保険です。


例えば、一時金を給付するタイプの保険。がんと診断されると保険金が支払われるものや、「一定期間就労できない」と診断されると保険金が支払われるものなどがあります。一時金の保険金は、50万円〜数百万円程度を設定でき、1年または2年ごとに診断給付を受け取れるタイプのものもあります。生活費や初期治療費などに使えるので、利用しやすい保険と言えるでしょう。


保険診療と自由診療を合わせた「混合診療」を補償する保険も


通院で抗がん剤治療を受ける場合、高額療養費控除制度を利用すると、一般的な所得の人で最大8万円〜10万円程度の負担となります(所得により高額療養費控除の上限が違います)。一般的な通院に関する保険では、「通院日数×保険金」が支払われるため、負担額を補償することができない可能性があります。最近は、抗がん剤治療に特化し、抗がん剤治療を行った月に、決められた保険金が支払われる保険もあります。


しかし、国内未承認の抗がん剤は、健康保険などを使用して治療を受けることができません。これを自由診療といいます。現在の日本では、自由診療と保険診療(保険で認められている治療法)を合わせて受ける「混合診療」が認めていないため、混合診療を行う場合は、保険診療分も含めて全額自己負担となります。このような混合治療にかかった実費を補償する保険もあり、「自分が良いと思うものは全て試したい」と考える人にはオススメです。ただし、補償が手厚い保険は、一般的に保険料が高くなるため、「今の収入」「もしも、がんになった時はどのような治療を受けたいか」という両面から、貯蓄や保険について考えてみてください。


「がんと生きる」は大きなストレス。生活費や治療費用の備えを


残念ながら、現状では、がんであることを職場に報告することにより「契約が打ち切りになる」「希望していない部署に配置転換になる」ということもありえます。また、以前より減収になるケースも少なくありません。「がんと生きる」ということは、本人には大きなストレスです。前向きになるためにも、当面の生活費や治療費用などをあらかじめ準備しておくと、それだけストレスが少なくなり、人生の選択肢も増えてくると思います。


現在、厚労省は、がん患者の就労支援のあり方について専門家による検討会を設けて議論しています。早い時期に国の対策が定着し、がん患者でも働きやすい社会になってほしいものです。



(佐々木 茂樹・ファイナンシャルプランナー)

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