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安倍政権が誕生してから1年が経過。アベノミクス効果によって景気が上向き加減で、政権の支持率も高水準を維持しているということもあってか、安倍総理は長年の宿願であった集団的自衛権行使を認めさせるための解釈改憲にまで踏み込もうとしています。
安倍総理は、これに先立って、特定秘密保護法を強行採決したり、政権発足1年を機に外国からの自制を求める声を押し切って靖国神社に参拝したり、従軍慰安婦を巡る河野談話の検証をする方針を示したりするなど、海外から「右傾化」と批判を受けるような動きを活発化させている印象があります。
右傾化の一般的な定義としては、「愛国心や国粋主義的な思想の傾向を強めている」ということを指すようですが、「伝統的な社会秩序や価値観を重視する思想の傾向」と理解すれば良いのかと思います。確かに、安倍総理の言動を見ていると、その思想的背景に国家主義的なものが存するように感じますし、道徳教育を重視する姿勢もわが国の伝統的価値観を取り戻したいという考えの表れと思えるので、安倍政権の目指すところがこれまでの政権の姿勢と比較して右寄りであり、その実現のための政策を進めているということはあるでしょう。
しかし、例えば、これまでの政権が自制してきた総理の靖国神社参拝については、安倍総理個人の強い思いから強行したわけですが、多くの国民は、安倍総理個人の思想的な問題として見ているのであり、そのことをもって、日本という国全体が右傾化していると評価されるのは、ちょっと違うのではないかという気がしています。
ただ、中国や韓国との関係をみると、日本人の両国に対する国民感情が急速に悪化していることは間違いなく、この両国が歴史問題を取り上げて日本に対する批判を続けることから、20世紀初頭以降の我が国の歴史に対して多くの国民が関心を持つようになり、そのことが中韓両国への嫌悪感情と相まって、日本全体を伝統主義に向かわせているのではないでしょうか。
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また、東日本大震災の際の被災者の自制的な行動は世界中から称賛されましたが、そのような振る舞いは、私たち日本人にとってはごく普通の行いでした。そのことを称賛されることによって、私たちは先祖が培ってきたものに対する自信を深めたということもあるのだと思います。
そのような様々な要因が重なって、現在の私たち国民の心情としては、戦前・戦中の我が国の行いを全否定するような戦後教育に対して懐疑的になっているところがあります。そのために、本当のことを確認したいと自国の歴史を検証することを右傾化と評するのであれば、確かに我が国は右傾化しているのだと思います。しかし、それは、皮肉にも我が国の右傾化を非難している中韓両国の影響が非常に大きいと言わざるを得ません。
戦後教育を受けた多くの日本人は、授業時間の関係もあって、我が国の近現代史を学ぶ機会が極めて少なかったように思います。それが、昨今の我が国を取り巻く情勢を受けて、自国の歴史を振り返ったときに、アジア諸国に対する侵略者と教わった内容が必ずしも正 しくないと感じた国民が少なくなかったのではないでしょうか。
そのことが、我が国が右傾化していると評価される理由なのかもしれませんが、しかし、それと我が国が他国に対して再び戦争をするということは全く違うレベルの話です。この点については、誤解されないような発信をしていく必要があるのだと思います。
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