転職後に古巣の悪口をSNSに書く危険性

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2014年03月19日 17:00  JIJICO

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手軽さゆえに法的な意識も希薄になりがちのSNS


インターネットの普及に伴い、SNSを利用する人が多くなってきました。特に、若い世代の利用者にとって、SNSへの書込みは、親しい友人らに対して近況等をメールで知らせるのと同じ感覚のようです。しかしながら、その手軽さないし安易さゆえに、法的な問題が生じる可能性があるとの意識も希薄になりがちです。SNSでは、情報の公開先を限定する設定をしたとしても、実際には「不特定または多人数に伝播する危険性」があるため、重大な問題に発展しかねないことを認識しておく必要があります。


企業の従業員が、転職後に古巣の企業の悪口をSNSに書き込むといったことは、しばしば見られる行為のように思われますが、その安易な行動の落とし穴は次のとおりです。


悪口が真実であっても民事責任のみならず刑事責任も


まず、名誉毀損(事実を摘示しない悪口の場合は侮辱)の問題です。書き込んだ悪口の内容が、元の勤務先の社会的評価を下げるものであった場合には、仮にその内容が真実であった場合であっても、名誉毀損行為として民事責任(民法709条、723条)のみならず刑事責任(刑法230条)の問題が生じます。もちろん、その真実の内容が「公共の利害に関する事実」であること、「専ら公益を図る目的」で書き込んだものである場合には名誉毀損は成立しません。しかし、SNS上で古巣の悪口を書き込む場合、通常はこれらの要件を充足しないでしょうから、名誉毀損になる可能性が極めて高いということになります。


企業活動に重大な支障を与えると、莫大な損害賠償請求の対象に


さらに、書き込んだ内容が真実ではなく、虚偽である場合には、名誉毀損のみならず、信用毀損や業務妨害にもなり、同様に民事責任(民法709条)ないし刑事責任(刑法233条)が生じ得ます。名誉毀損罪の場合には、被害者の告訴がなければ刑事責任を問われることがないのに対し、信用毀損罪や業務妨害罪の場合は、被害者の告訴がなくても刑事責任を問われてしまいます。


民事責任を問われるに過ぎない場合であっても、安易に書き込んだ行為によって、元の勤務先の名誉ないし信用を毀損することとなり、企業活動に重大な支障を与える結果となった場合には、個人としては到底支払い切れないような莫大な損害賠償を請求されることにもつながりかねないということを、肝に銘じなければなりません。


企業が従業員にSNS利用の危険性を認識させることも必要


他方で、この問題の重要性は、従業員を抱える企業側も危険性を認識しておかなければならないということです。現在の従業員のみならず、転職した元従業員によるSNSへの安易な書込みによって企業の信用が失墜してしまい、その活動に大きな痛手を被る可能性を考えれば、企業自体が従業員にSNS利用の危険性を認識させる教育を行い、場合によってはSNS利用に関する誓約書を作成させるなどして、事前の対策を講じておくことも必要でしょう。



(田沢 剛・弁護士)

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