北海道「男性用DVシェルター」の意義

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2014年03月29日 17:10  JIJICO

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女性用シェルターは、精神面の安定を取り戻すための施設


北海道が、妻などの女性からドメスティックバイオレンス(DV)を受けた男性向けのシェルター(一時避難所)を、道内の社会福祉法人に委託して6月にも開設すると報じています。DVというと、「男性が女性に対して暴力をふるう」というのが一般的ですが、まれに女性の方から男性に対して暴行や刃物を持ち出した脅迫がなされるなどの事例も見受けられます。


私が体験した離婚事件でも、婚姻当事者双方が「相手からDVを受けた」と主張することは少なくありません。ただ、女性に対するDVと男性に対するDVには、違いがあるように思います。女性に対するDVの場合は、女性が経済的、あるいは精神的に男性に対して強い従属関係にあることがほとんどです。「経済的に従属している」というのは、男性からの肉体的・精神的な暴力に耐えないと生活できない、という場合です。「精神的に従属している」というのは、暴力をふるわれたとしても、それは一時的なもので、その直後に男性が反省や愛情を示す言動を発すると、「本当は悪い人ではない」などと自分自身を納得させて「離れられなくなってしまう」というパターンです。男性の方も、相手に対する支配関係を確立してDVを行っており、その行為が家庭内という閉鎖された空間で行われるので、女性はなかなか逃げ出せませんし、逃げ出したとしても「行くところがない」ということもあります。そのために、男性のDVから逃れた女性をかくまい男性を寄せ付けないようにして、生活だけでなく精神面の安定も取り戻すために一時的にかくまう施設が「シェルター」なのです。


男性用シェルターは、「一時的な居住場所」という意味合いが強い


一方、女性からのDVというのはどういうことで起こるのかというと、妻が「育児や経済的に満たされない」などのストレスを夫にぶつけるというパターンが多いのではないでしょうか。ただし、通常、男性は自宅の外で仕事をしていることが多く、自宅でDVを受けていたとしても、外に出て安全を確保することは難しくないので「シェルターにかくまってもらわなくても良いのではないか」という気もします。


報道によると、男性からのDV相談は「妻が刃物を振り回したり、金づちで殴られたりしたことがある」「妻から『死ね』と言われ続け、逃げたい」といった内容だということですが、そのようなDVを受けても家に帰るのは「自分が家庭を守らなければならない」という責任感に加えて、「ほかに行く場所がないから」ということなのかもしれません。そういう意味では、男性用シェルターの存在意義は、女性用のように「相手を寄せ付けない」ということよりも、新しい生活環境を作るまでの「一時的な居住場所」という意味合いが強いのかもしれません。



(舛田 雅彦・弁護士)

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