実はカレーライスよりも歴史が深い? 「ハヤシライス」誕生秘話

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2014年03月30日 09:12  BOOK STAND

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 シェフによるレシピ本やレシピ検索サイト「クックパッド」には、作り手が趣向を凝らして考えた様々な創作料理が紹介されています。なかにはその着想に驚くメニューもありますが、私たちが普段慣れ親しんでいる定番メニューにも意外なルーツや由来があるのをご存知でしょうか。

 例えば、洋食の定番ハヤシライス。その由来についてはいくつかの説がありますが、「ハッシュド・ビーフ・ウィズ・ライス」がなまったというものや、牛肉を食べる文化が浸透していなかった当時、ハヤシライスのような料理を食べていたら「早死にする」ということから「ハヤシライス」と呼ばれはじめたという説もあるのだとか。

 数ある"ハヤシライス出生説"があるなか、書籍『あのメニューが生まれた店』で、著者の菊池武顕氏が紹介されているのは「ハヤシさんが作った」というものです。

 ハヤシさんとは、明治2年に丸善を創業した早矢仕有的氏のこと。丸善の広報担当者も早矢仕氏の関わりは間違いないと言います。

「社史担当者に代々伝わっている話があります。明治の初期、丸善には丁稚さん──少年ですね──が相当おりまして。こうした社員の、店を閉めた後に英語とか会計を教える夜学をやっていました。有的はその夜食に、少年の栄養を考えて肉と野菜のごった煮をご飯にかけて提供したというんです。また、有的の曾孫さんの丸家稔さんがお母さんから聞いた話として、滋養をつけるために患者に勧めたという説を唱えています」

 菊池氏の取材によると、その頃の味は今とは少々異なるということ。ドミグラスソースが日本に入ったのは、明治20年代以降のことであるため、早矢仕氏の時代には醤油味か味噌味だったのだそうです。

 ちなみに、ハヤシライスと似た存在であるカレーライスが日本で始めて食されたのは明治4年頃と言われていますが、早矢仕氏が肉と野菜を煮込んでご飯にかけたのはその前となるのだとか。

 意外にも、ハヤシライスはカレーライスよりも歴史が長いのです。


『あのメニューが生まれた店 (コロナ・ブックス)』
著者:菊地 武顕
出版社:平凡社
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