集団的自衛権の行使、本当に必要?

3

2014年04月08日 13:10  JIJICO

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

JIJICO

写真
集団的自衛権は、国連による集団安全保障が機能するまでのつなぎ


安倍首相は現在、会期中の通常国会中で「集団的自衛権」について、行使容認の方向に解釈を変更することを視野に入れているようです。


「集団的自衛権」とは、自分の国が攻撃されていなくても、密接な関係にある他国が攻撃された場合に反撃する権利を言います。例えば、日本と友好関係のあるY国がいて、X国がY国を攻撃したとき、日本がY国を助けるためにX国を攻撃するという行動です。


国連の憲法と位置付けられる国連憲章の51条では、加盟国が個別的自衛権に加えて、集団的自衛権を持っていることが認められています。この集団的自衛権は本来、国連による集団安全保障が機能するまでのつなぎとして行使することが認められたものです。しかし、現実には米ソの冷戦を背景に国連の集団安全保障はなかなか機能せず、実際に集団的自衛権が行使されるのは、旧ソ連のアフガン侵攻や米国によるベトナム戦争など、小国同士のいざこざに大国が軍事介入する口実としての場面がしばしばありました。


「日米安保条約の片務性」の裏で、基地を提供し莫大な維持費負担


他方、日本の歴代内閣は、憲法9条の下では、個別的自衛権は使えるものの、集団的自衛権は使えないとの立場をとってきました。すなわち、憲法9条で許されている自衛権の行使は「必要最小限度」にとどまるべきだとし、自国が攻撃を受けていない状態で武力を使う集団的自衛権は、その範囲を超えるため憲法上許されないとの立場です。


安倍首相は、「わが国を取り巻く安全保障環境はますます厳しさを増し、脅威は容易に国境を越えてくる」と、しきりに集団的自衛権の行使を認める必要性を訴えています。こう主張する理由について安倍首相は、米国が他国に攻撃されても、日本が集団的自衛権を使って反撃に加われない「日米安保条約の片務性」を挙げます。確かに、1960年に改訂された現行の日米安保条約では、米国が日本を守る義務を負う一方、憲法上の制約がある日本は米国を守ることができず、「片務的」であるとも言えますが、日本政府は米国を守ることがない代わりに国内の基地を提供し、その莫大な維持費を負担し続けています。


有識者会議では、集団的自衛権の行使は可能とする見解。しかし…


安倍首相が立ち上げた有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)は、現在取りまとめている報告書の中で、米国に向けてミサイルが発射されたとき、これを日本が迎撃するという事例を想定して、憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使は可能とする見解にお墨付きを与えると見られていますが、そもそも現在の技術水準でこのような行動を想定するのは不可能でしょう。


その他にも、安保法制懇の検討している事例は、想定そのものが現実離れしていたり、前提条件があいまいだったり、集団的自衛権で解決すべき問題、集団安全保障で解決すべき問題、また平時と有事のグレーゾーンの問題などをごっちゃにしていたりと、精緻な検討がなされているとは言えない部分が目につきます。


また、集団的自衛権の行使容認の中身以前に、これまで長い年月にわたって維持してきた憲法9条をほぼ形骸化するような大きな政策の転換を、憲法改正手続きではなく、単なる閣議決定により行おうとすることが妥当なのか、そうした疑問も、憲法を国家権力に対する歯止めと捉える立憲主義の観点からは、決して軽視することはできないと思います。



(名畑 淳・弁護士)

このニュースに関するつぶやき

  • 憲法裁判所があるわけでもないし、立憲主義っていったってただの言説にすぎないわけだし、立憲主義が正しいって前提があるから主張が成り立っとるけど何が正しいのかを教えてくれるやつっていねえな。ただの伝統、慣習だろ
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(1件)

前日のランキングへ

ニュース設定