先日『アナと雪の女王』を映画館に観に行ったときのこと、上映前に、7月に公開されるディズニー実写映画の新作『マレフィセント』の予告編が流れた。
(公式サイト:
http://ugc.disney.co.jp/blog/movie/category/maleficent/ )
マレフィセントとは、『眠れる森の美女』に登場する悪の魔女の名前である。アンジェリーナ・ジョリーがこの魔女を演じ、彼女の視点から描かれる作品となるようだ。
ディズニー作品には、マレフィセントをはじめとする悪役キャラクターが多数存在する。『ふしぎの国のアリス』のハートの女王、『ピーター・パン』のフック船長、『シンデレラ』の継母&継姉たち……ディズニー作品にはお姫様やヒーローに対立する悪役が不可欠だ。
作品の多くは勧善懲悪がモットーなので、悪役たちは物語の最後で倒されることになるが、この悪役たちは総称して「ディズニー・ヴィランズ」と呼ばれ、ディズニーの中でも一大ブランドとなっている。
ヴィランズ(=villains)。悪役、敵役という意味の英語で聞き慣れない言葉だなと思っていたが、本国アメリカでは1990年代に商品化が進んでいったらしい。ヴィランズを主役にした『フック』『101』といった実写映画も90年代に公開されている。
このところ、ほかのディズニーキャラクターのようにヴィランズグッズを街で目にする機会が増えた。数年前にコスメブランドのM.A.Cが、ヴィランズのイラストを使ったメーキャップアイテムを販売したのが記憶に残っている。
ディズニーキャラクターはアパレルなどでもよくコラボレーションしているが、ヴィランズをモチーフにしたグッズを見たのはそのときが初めてで、非常に印象的だった。
10数年前、シンデレラや白雪姫に代表されるプリンセスのキャラクターグッズがブームになり、今では定番商品となっているが、近頃は雑貨店などでもヴィランズのグッズがプリンセスの商品と並んで置いてあったりする。
ただ、ディズニーストアの公式サイトを見てみると、「キャラクターから探す」のカテゴリにはなかったので、まだちょっとニッチなアイテムなのかも?
私は小さい頃、ディズニープリンセスの中でも『眠れる森の美女』のオーロラ姫が一番好きで、絵本も持っていたのだが、マレフィセントという名前は知らなかったし、他のヴィランズについても名前は知らないキャラクターがほとんどであった。
近年のディズニー映画(ピクサー作品含む)を見ていると、大人向けな要素が強いなあと感じることがしばしば。自分がすでに大人になっているから、「大人向け」と感じるのかもしれないが、『アナと雪の女王』にしても、旧来の「お姫様のピンチを王子様が救う」というステレオタイプな展開ではなくなっている。
勧善懲悪やハッピーエンドというベースが大幅に変わっているわけではないのだけれど、とくにピクサー作品なんかはブラックなジョークだったり、ちょっとシニカルだったり、たまに「これを子どもが見て理解できるのかな?」と思うこともある。
そして次は『マレフィセント』。これもまたヴィランズが主役だなんて、やはりターゲットは大人なんじゃないだろうか? それとも、「子どもはぜひママパパも誘って一緒に見てもらってね」という戦略なのか。
そもそも本国アメリカでは、とくに子どもの間でヴィランズって人気があるのだろうかと、幼少期から海外在住経験が長く、高校時代をアメリカで過ごした友人に質問をしてみた。結論からすると日本での認知度よりはるかに人気が高いもよう。
とくに男の子の間では、フック船長はじめ、『アラジン』のジャファー、『101匹わんちゃん』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』の悪役たちなど、アクションの多い明るい映画のキャラクターの人気が高く、男児用の玩具やゲームもあったそうだ。
ただ、ショッピングモールなどにあるディズニーストアには、プリンセスもののアイテムの方が多く、女の子たちはみんなプリンセスやティンカーベルが大好き、ディズニーコラボのバービー人形を持っている子も多く、ヴィランズ好きはそれほどいなかったという。
また、小学校高学年以降になると表だってディズニーキャラが好き!ということは少なくなるそう。ここは日本の中高生と異なり、キャラクターものは子どもっぽいとされ、あまり好まれない文化なのだとか。
一方、大人向け(高校生くらいから)のヴィランズアイテムは、Tシャツ、トレーナー、バックパック、ショットグラスなど、かなり豊富な様子。とりわけゴシック趣味の学生は、ヴィランズはじめ、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』のグッズや洋服を持っていることが多いとか。ヴィランズメインのアメコミも連載されていたりと、かなり浸透したカルチャーのようである。
「ディズニーのキャラクターで何が好き?」という質問はしても、「どのヴィランズが好き?」とは聞いたことも聞かれたこともないのだが、今後、ヴィランズにスポットを当てた作品の台頭により、「好きなキャラクターはミッキーマウス!」「私は白雪姫!」というように、「私はヴィランズが好き!」と言う子どもたちも増えていくのだろうか。
真貝 友香(しんがい ゆか)ソフトウェア開発職、携帯向け音楽配信事業にて社内SEを経験した後、マーケティング業務に従事。高校生からOLまで女性をターゲットにしたリサーチをメインに調査・分析業務を行う。現在は夫・2012年12月生まれの娘と都内在住。