西日本で拡大する新型耐性菌「CRE」

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2014年04月16日 10:10  JIJICO

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JIJICO

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強力な抗菌薬に耐性を持つ細菌が広がりを見せる


米疾病対策予防センターは昨年、強力な抗菌薬カルバペネム系抗生物質が効かない腸内細菌科の細菌(Carbapenem-Resistant Enterobacteriaceae、CRE)による感染症が増えており、早急な対応が必要であると発表しました。先日、大阪でCREの一種である「メタロβ(ベータ)ラクタマーゼ(MBL)産生菌」の大規模な院内感染がニュースとなりました。


CREとは、病院で「最後の切り札」とされる抗菌薬のカルバペネム系抗菌薬が効かない、すなわち、耐性を獲得した肺炎桿菌(かんきん)や大腸菌、さらに、その仲間の腸内細菌科に属する細菌のことです。CREは、カルバペネム系抗菌薬に対して耐性を獲得しているのみならず、他の抗菌薬にも多剤耐性を獲得していることが多く、感染症を引き起こした場合、効果的な抗生剤がないため治療が難しくなります。


また、CREの菌種はもともと腸内に生息しやすい菌種であるため、人の腸内に長く定着する性質を持ちます。肺炎や尿路感染症などを引き起こす場合が多く、手術後の患者では、手術部位の感染症や腹膜炎などの原因になることもあります。さらに、血液中に侵入して敗血症などを引き起こすと、重篤化する恐れがあり、死に至ることも稀ではありません。


健康な日常生活を送っている上では無害だが…


しかし、健康な日常生活を送る人に関しては、CREに感染することは少なく、感染しても無害なので、基本的に心配する必要はありません。CREに感染して身体の中に入ることが、必ずしも病気を発症するわけではないのです。


海外旅行先で感染することもあります。海外で医療行為を受けた場合、旅行中、あるいは帰国後、体調不良等で医療機関を受診した際、海外に出掛けていたことを必ず医師に報告してください。外国から帰国して体調不良が続く人が周りにいて、自分の調子が悪くなった場合もその旨を医師に報告しましょう。


健康な日常生活を送っている人には、上述したようにCREはほぼ無害です。しかし、何かの理由で抗生剤を内服している人は、CREが感染して増え、症状が出現することもあります。また、CREが検出される患者の喀痰(かくたん)や便などの処置や処理の際には手袋を用い、終了後、石けんで手指を洗ってください。常日頃から、手洗いうがいを励行することが重要です。



(大西 勝也・内科医)

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