「黒ノッポさん」意外性を狙う宣伝効果

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2014年04月21日 10:10  JIJICO

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意外性を狙った起用に隠された要素


4月から日本テレビ系列で放送されているテレビ番組「人生終了クイズ」。NHKの教育番組「できるかな」に出演していたノッポさんが司会を務めていますが、そのキャラクターに関してインターネットを中心に話題を集めています。以前までは優しそうなイメージが強かったノッポさんですが、今回の出演番組では毒舌キャラクター「黒ノッポさん」に変貌しています。


こうした意外性を狙った起用は宣伝方法としても有効で、過去にもいくつか成功例があります。元猿岩石で、さわやかキャラクターの有吉弘行さんが「毒舌の有吉」として売り出した例もよく似ています。その裏側には、「一貫性」と「らしさの破壊」という、二つの要素が隠されています。


一貫性とは視聴者が抱くイメージで、毒舌が許される資格


有吉さんは、世界中をヒッチハイクで旅するという企画で人気を得た芸人ですが、時間の経過とともにお茶の間から忘れ去られました。その間、テレビに出ている芸人に向かって、毒舌を吐いていただろうと視聴者は想像できます。その後、「毒舌あだ名芸」で再ブレークしました。


毒舌が、過去にテレビに出ていた「有吉らしさ」を破壊したのです。そして、一貫性とは視聴者が抱くイメージで、毒舌が許される資格です。有吉さんの場合、成功したものの、どん底に落ちたという経験がその資格になっています。このギャップが「かわいそう」や「苦労していたんだな」というイメージにつながり、毒舌の免罪符となります。一貫性がなければ、「お前が言うな」という反発につながります。「多忙な芸人への嫉妬+さわやかキャラクターの破壊=毒舌ポジションの獲得」となるのです。


一貫性があるからこそ、「らしさの破壊」でギャップが際立つ


黒ノッポさんは、過去の成功例を研究し、計算され尽くしたキャラクターです。宣伝でも使われた特徴的なセリフ「デキる? じゃねえよ、ヤルんだよ!」も、「一貫性」と「らしさの破壊」という要素から成り立っています。教育番組「できるかな」で20年も活躍し、「国民的工作のお兄さん」という認知が広まったからこそ、一貫性が生まれました。「番組での長年の苦労+優しいお兄さんの破壊=黒ノッポさんポジションの獲得」になったわけです。この場合、キャラクターを守り続け、番組を長年続けた実績が、毒舌を許される資格になります。一貫性があるからこそ、「らしさの破壊」でのギャップが際立ちます


「黒ノッポさん」のような方法は、企業でも宣伝として利用できます。NHK、井村屋や自衛隊も、「一貫性」と「企業らしさの破壊」を使ってTwitterで話題を集めました。NHK広報は、お堅いテレビ局という一貫性があるからこそ「ゆるーく伝える」ことが、「らしさの破壊」につながったのです。



(木村 尚義・経営コンサルタント)

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