全国学テ、成績公表に否定的なワケ

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2014年04月27日 17:10  JIJICO

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全国の区市町村教育委員会で公表予定はわずか2%


4月22日に全国の小学6年生、中学3年生を対象とした「全国学力テスト」が実施されました。約224万人が受けたこのテストは、国語と算数(数学)の2科目で、基礎的な学力を見るA問題と、活用力を見るB問題に分かれています。文部科学省によると、文章から必要な情報を抜き出して自分の意見を考えさせる問題など、前回のテストで正答率の低かった分野の問題を増やしたということです。


この全国学力テスト、最大の問題点は学校ごとの成績を公表するか否か、ということです。学校ごとの成績は今回から公表が可能になりましたが、全区市町村の教育委員会中、公表する予定はわずか2%で、残りは公表しない方針、または検討中です。公表しない理由として多く聞かれるのは、「学校や地域の序列化につながる」「過度な競争を招く」などです。しかし、昨年度、文部科学省が実施した保護者対象の調査では、45%が成績の公表を支持しています。半数近くの保護者が公表を求めている現状で、公表予定の教育委員会が2%というのは健全と言えるのでしょうか。


競争による喜びや悔しさが子どもの力を伸ばす


そこで、成績を非公表とする理由について考えてみましょう。まずは「学校や地域の序列化につながる」ことに関して。この理由一つとっても、私は学校(教育)が「世間と隔絶された環境」だと考えてしまいます。現段階で既に、学校や地域の序列化は存在します。私の地元である東京都江戸川区の葛西には多くの学校がありますが、「〜中学校はレベルが高いから」「〜小学校が荒れているせいで、〜中学校も…」という話をよく耳にします。意外に思う人がいるかもしれませんが、多くの保護者は格差・序列の実態を把握しています。その上で、「序列はもうあるから、テスト結果を利用して格差を減らしてほしい」と考えているのです。


次に、「過度な競争を招く」ことについてです。学習塾経営という仕事柄かもしれませんが、今の小中学生を見ていて気になる点があります。それは、生徒たちの「他者と競争しない姿勢」です。テストも「60点くらいでいい」という具合で、貪欲な姿勢はありません。このようなぬるま湯で育った人間が、社会人になったとき自分の力で生きていくことができるでしょうか。もし、会社の社長であれば「他社に絶対に負けない製品を作ります!」という人と「まあ、ほどほどで良いのではないでしょうか」という人では、どちらを採用しますか。少なくとも私は、自分の教え子たちには前者になってほしいと思います。


子どもたちはテストをするとすぐに点数を知りたがり、友だちと比べて、良かったら喜び、悪かったら悔しがるものです。この喜びや悔しさこそが、彼らの力を伸ばすことにつながります。確かに公表は控えるべき、という教育委員会の危惧も理解できます。私は、成績を公表することで「親の競争を招く」ことには反対です。しかし、「子ども同士の競争」は、ある程度までは奨励したほうが、本人のためになるのではないでしょうか。保護者の半数近くが公表を希望している現状を踏まえ、子どもたちの将来のために議論を尽くしてほしいと思います。



(斉藤 秀雄・学習塾校長・講師)

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