「スカルプD」のアンファーが「所得隠し」で重加算税 なぜ「アウト」とされたのか?

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2014年04月28日 18:20  弁護士ドットコム

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「さあ、立ち上がれ、髪の毛たちよ――」。お笑いコンビ・雨上がり決死隊などの人気タレントが出演するテレビCMで知名度をあげた「スカルプD」。この薬用シャンプーを販売する化粧品会社「アンファー」が、東京国税局の税務調査によって、2年間で約1億5000万円の所得隠しを指摘されていたことが今年2月に判明した。


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そのときの報道によると、同社は約20億円の広告宣伝費を支払い、商品のイメージアップを依頼。広告会社が約20人の芸能人と契約し、テレビやネットのCMを放送したが、このうちの4人がCMにまったく出演していなかった。国税局は「広告宣伝の実態がない」と判断し、広告宣伝費に仮装したとして重加算税の対象としたという。



アンファーは「国税局と広告の概念について見解の相違があった」と説明しているというが、なぜ国税局から所得隠しと指摘されたのか。税理士の須賀智仁氏に聞いた。



●「不特定多数に向けた広告宣伝」といえるかどうか


「会社の経費として広告宣伝費が認められるためには、次の2点を満たす必要があります。



(1)不特定多数の者を対象としている広告宣伝行為の実態があること


(2)その広告宣伝行為が費用計上した事業年度の中で行われていること



今回のケースでは、国税局から『広告宣伝の実態がない』という指摘を受けています。



アンファー側は、広告宣伝費を支払った4人の芸能人がテレビやネットのCMには出演していなくても、ネットのつぶやきなどの掲載で『口コミの広告宣伝』をしてもらったのだと主張していたようです。



しかし、これが、国税局には認められなかったのでしょう」



須賀税理士はこのように解説する。



●なぜ「広告宣伝費」と認められなかったのか?


だが、有名人がネットで商品名をつぶやけば、不特定多数の人に知ってもらうことが期待できる。これも一つの広告宣伝と言えそうだが、なぜ、認められなかったのだろうか。



「報道によると、国税庁が所得隠しと指摘した金額は約1億5000万円ということなので、これに近い金額が、アンファーから芸能人に支払われていたと思われます。



しかし、ネットでのつぶやきの掲載や口コミの広告宣伝だけでは、支払った金額と広告宣伝行為に妥当性がなく、『広告宣伝行為の実態がない』という判断がされたのだと考えられます。



このため、4人の芸能人に支払った費用は、広告宣伝費ではなく寄付金にあたるとされ、所得隠しとみられてしまったのでしょう」



須賀税理士はこう述べる。



「このように、広告宣伝に使った支出だから経費にできるだろうと思っても、寄付金とされたり、交際費として取り扱われたり、資産にしなくてはいけなかったりと、ケースバイケースの判断が必要なことが多々あります。



昨今は様々なインターネットメディアがあり、判断が難しいものもありますから、広告宣伝に使った経費は費用にできると安易に考えないほうがいいでしょう。間違った判断をしないように、専門家のアドバイスをもとに正しい処理をして、無用なトラブルを避けていくことが必要でしょう」



須賀税理士はこのように注意を促していた。


【取材協力税理士】


須賀 智仁 (すが・ともひと)税理士


大手監査法人、大手IT上場企業、ITベンチャー企業での経営者の経験を経て、現在、起業家の創業支援および東京及びシンガポールに事務所を設置し、税務会計サービス と共にグローバル・ビジネス支援サービスを展開している。慶應義塾大学経済学部、ミシガン大学MBA 卒 、1971年生まれ、 神奈川県出身。


事務所名   :公認会計士税理士 須賀智仁事務所


事務所URL:http://suga-associates.com/


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