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先日、タレントの中川翔子さんの交際報道で、交際相手が子どもの存在を中川さんに隠していたと報じられていました。この件の真相は明らかではありませんが、一般論として、子どもがいることを隠して交際しているという例はあるでしょう。相手からすれば、「騙された」「許せない」という気持ちになりそうですが、子どもの存在を隠しての交際に法的責任はあるのでしょうか。
まず、婚姻まで至らず交際関係にあるに過ぎない場合には、法的責任を問うというのは難しいように思います。子どもがいることを隠して付き合うということが、違法性のある行為として不法行為(民法709条)にあたるかどうかがポイントになりますが、個人的には、子どもの存在を隠しているだけでは、違法性がある行為とまでは言えないように思います。
ただし、いわゆる結婚詐欺のような、結婚する意思がないのに異性に近づき、様々な名目で金員を詐取する手段の一つとして、子どもの存在を相手に隠すというような場合は、民事上の損害賠償請求や、刑事上の詐欺罪の対象となり得ることは言うまでもありません。
では、子どもがいることを隠したまま相手と婚姻までしてしまった場合はどうでしょうか。交際相手に子どもがいないと信じて結婚した当事者を救済する法律はあるのでしょうか。
相手に子どもがいないことを前提として、あるいは、そのことを重視して結婚した当事者としては、相手に子どもがいるなら婚姻を取り止めたいと思うのも心情だと思います。この問題について、民法は、詐欺によって婚姻をした場合には、取消の請求ができるという規定を置いています(法747条)。しかし、この規定により婚姻を取り消すことができる可能性はありますが、裁判所が実際に取消を認めるかどうかは、具体的な事情によると言わざるを得ません。
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ただし、この取消の請求は、騙されていたことに気付いてから3カ月以内に行わなければならないという制約があるほか、仮に裁判所が婚姻の取消を認めてくれても、最初から婚姻がなかったことにしてくれるわけではなく、離婚と同じような形となり、戸籍にも婚姻をしていた事実は残ってしまいます。
では、何とか婚姻を最初から無効にできないかと言えば、本件のような場合には、婚姻の無効事由にあたるとは言えず、また一般に、民法95条の錯誤無効の規定も婚姻のような身分行為には適用されないとされていますので、なかなか難しいところです。結婚をするに際しては、事前に相手の戸籍をしっかりと確認するという自己防衛が求められそうです。
なお、仮に婚姻の詐欺による取消を認めてもらえない場合には、次善の方法として、子どもの存在を隠されていたことを理由に、離婚を求めることになるでしょう。相手が離婚に同意してくれない場合には、裁判で離婚を求めることになりますが、子どもの存在を隠されていたことが、離婚事由としての「婚姻を継続し難い重大な事由(民法770条1項5号)」にあたると主張していくことになります。これが認められる可能性は十分にあると思います。その場合には、併せて、相手に慰謝料を請求できる可能性もあります。
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