多重債務の額、一人平均1140万円

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2014年05月10日 13:10  JIJICO

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平均債務額を紐解くと浮かび上がる債務者の実態


報道によると、東京都などが実施した「多重債務110番」での平均債務額が1140万円にのぼったそうです。それだけ多額の借金をすれば、返済に行き詰まるのも当然とも思えますが、相談内容の分析結果をもう少し詳しくみてみると、また違った様相が浮かび上がってきます。


「債務額」の内訳をみてみると、100万円未満の債務者が20.4%、100万円〜300万円未満の債務者が27.8%となっており、債務額が300万円未満の債務者で全体の約半数を占めています。「借入先数」も2社以内の債務者が約半数です。そして、借入れ理由で最も多かったのが「低収入・収入の減少」です。


これらの分析結果からうかがえるのは、収入の減少により困窮し、生活費や住宅ローンの不足を補うために比較的少額の借り入れに手を出したものの、その返済によってさらに生活を苦しくしているという債務者の実態です。平均債務額には、住宅ローンや事業資金も含んでいますので、おそらくそれら高額の借入が平均額を押し上げたものと思われます。ちなみに。最高債務額は2億円でした(事業資金を含む)。


破産は減少傾向に。平成15年をピークに激減


ところで、借り入れの返済ができなくなってしまった場合、まず頭に浮かぶのは「破産」ではないでしょうか。バブル崩壊後は、ずっと不景気が続いてきた印象がありますから、破産事件の件数も右肩上がりで増加してきたと思われがちです。しかし、意外なことに、破産事件の件数は、平成15年をピークに一貫して減り続けています。その減少カーブは激減といってもよく、司法統計によれば、破産事件の新受件数は、平成15年は25万1800件だったものが、平成24年は9万2552件にまで減少しました。この9年で3分の1近くまで減ったことになります。


その背景事情としては、過払金返還請求が周知されたことや、貸金業法の改正による総量規制などがあると思われます。金融機関が住宅ローンなどの条件変更に柔軟に対応していることも要因のひとつかもしれません。


返済のために新たな借り入れをすることはタブー


破産という事態に陥らないためには、無理な借り入れをしないことが第一です。もっとも、住宅や自動車の購入資金、事業資金などは、借り入れをせずに捻出することが難しいのも事実。もし、収入の減少などで借入金の返済が難しくなったら、銀行等に相談をして条件変更をしてもらうのもひとつの方法でしょう。


返済のために新たな借り入れをすることはタブーです。返済額が増えて、いずれ行き詰まってしまう可能性が高いからです。銀行等が条件変更に応じてくれないケースでは、個人再生などの破産以外の方法によって、住宅などの資産を手放すことなく負債を整理する方法を検討することもできます。



(後藤 直樹・弁護士)

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