川崎Fの大久保嘉人にとって、ブラジル・ワールドカップを戦う日本代表に大逆転での招集を受けた5月12日はちょうど父親の一周忌。昨年5月12日、闘病の末、父の克博さんが亡くなった。
愛する父の死後、大久保は本人いわく「抜け殻のようになった」。3月に出版した自伝『情熱を貫く 亡き父との、不屈のサッカー人生』で明らかにしたもので、「ほとんど、眠ることもできなかった」し、「まるで、真っ白な灰になってしまったようだった」とも語っている。
しかし、「かろうじて俺の心を支えていたのは、お父さんが残した一枚の白い紙だった」という。父の遺書には「ガンバレ 大久保嘉人」、「日本代表になれ 空の上から見とうぞ」という最後のメッセージが記されており、大久保は「それを見るだけで、俺の胸は熱くなる」とつづっている。
南アフリカ・ワールドカップ後には代表引退の四文字も頭にちらついたが、天国にいる父にもう一度晴れ舞台に立つ姿を見せたいという思いが強まった。「たった一枚の紙が、俺が失いつつあった野心と情熱をよみがえらせてくれたのだった。それは、お父さんがこの世に残してくれた最後の宝物だ」と記している。