図書館が地域活性化の起爆剤に

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2014年05月15日 10:10  JIJICO

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TSUTAYA運営。注目を集める佐賀県の武雄市図書館


書籍・音楽ソフト・映像ソフトのレンタル・販売店大手チェーン「TSUTAYA」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブを指定管理者とし、スターバックスが併設されるなどで話題となった佐賀県の武雄市図書館。来館者が急増し、観光名所化したことで他の市町村から「図書館でまちおこし」として注目を浴びつつあります。


そもそも、図書館は(1)人類の知のアーカイブ(2)地域の読書施設(3)情報発信・収集の拠点と言った機能をバランスよく有しているからこそ、公共施設としての役割を果たしていると言えます。


しかし、日本では「知の拠点」としての格式を重んじ、「流行の図書」を集めて無料で貸し出すサービスに特化した図書館が多いのが現状です。一方でインターネットの普及と宅配流通網の整備は、「図書」を取り巻く環境を激変させました。専門書などを手に入れることが難しかった時代、地方にある図書館の存在意義は大きなものでした。しかし、現在は地方でもネット通販で欲しい本が翌日に届くようになりました。


また、読書離れにも拍車が掛かり、閲覧室で読書をせず、勉強のために使用している学生たちに占拠される図書館から足が離れていくことは仕方のないことかもしれません。武雄市図書館は指定管理者制度を活用し、TSUTAYAが図書館を現代の生活様式に整合させたことが、多くの人たちを引き付けた理由の一つだと言えます。


カナダ・バンクーバー市立図書館を例に見る新しい役割


個人的には、カナダのバンクーバー市立図書館で新鮮な驚きを得たことを思い出します。そこは閲覧室内での飲食は不可でしたが、図書館の建物内にカフェやレストランが併設されていました。また、中に入ると英語の図書のみならず、急増している中国語圏市民向けの中国語の図書やバンクーバー市在住のあらゆる民族の言語による図書が揃えられていました。日本語やヒンディー語、スペイン語、韓国語、ベトナム語など14ケ国の図書が利用できるようになっています。バンクーバーは中国系を中心にさまざまな言語を話す移民で構成されていて、マルチカルチャーの融合が街づくりの大きな課題となっています。


バンクーバー市立図書館はさまざまな言語の図書や新聞などを設置することで、英語やフランス語圏以外の人々が立ち入りやすい環境を整え、バンクーバー市からの広報や情報をより多くの市民に伝えることができる機能を有しているのです。図書館内は図書の閲覧形態が明確に分けられているため、専門書が集められた階では読書に集中できる環境が整えられている一方、各国の新聞やペーパーバックが揃えられた階や児童書が集められた階などからは、話し声が聞こえるリラックスした雰囲気が整えられていました。


知のアーカイブや地域の読書施設の機能を満たしつつ、「情報発信・収集拠点」機能を見直すことで、図書館が地域コミュニケーション拠点として地域の抱えている課題解決の一端を担うといった図書館の新しい役割が見えてくるのではないでしょうか。



(谷口 庄一・都市環境プランナー)

このニュースに関するつぶやき

  • 武雄の図書館は 本を探す図書館としては使いにくくなってしまった、残念。でもあれは図書館だとさえ思わなければユニークなアイデアの楽しい施設。テーマパークだとおもえば悪くない。
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