アベノミクス効果、九州への浸透度

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2014年05月21日 17:10  JIJICO

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九州・沖縄の景況は緩やかに回復傾向。東京五輪まで上昇基調に


安倍内閣の「3本の矢」である大胆な金融政策、機動的な財政政策、日本再興戦略(成長戦略)は、着実に効果を発揮しています。ただ、アベノミクス効果は波紋のように中央から地方へ、大企業から小規模事業者へ、時間をかけて段階的に現れています。では、九州の中小企業・小規模事業者はアベノミクスの恩恵を受けているのでしょうか。


日本銀行福岡支店の九州・沖縄の金融経済概況(2014年5月分)を見ると、百貨店、スーパー売上高とも全国には遅れますが、2013年10-12月から前年比プラスに転化しています。2014年3月のピークに向け、消費税駆け込み需要が急伸しており、高額商品ほど立ち上がりが早かったことが窺えます。


また、企業の業況感を示す業況判断DIは、2013年6月から全産業プラスに転化。銀行の預金残高、および貸出残高は、前年比3〜4%増で推移し、前年に比べ着実に好転しています。倒産件数は2013年10-12月までは減少していましたが、2014年1-3月は増勢。これは景気回復期に、一時的に倒産件数が増える傾向があるためと考えられます。


現場の肌感覚や投資家などの話を総合し概観すると、九州・沖縄の景況は緩やかに回復しています。この傾向は少なくとも、消費税率が10%になる2015年10月までは続き、その後、一時的な反動減はあるとはいえ、東京五輪開催の2020年までは上昇基調を辿るとみています。


ここで、九州における五輪効果についてはどうでしょうか。海外の投資家による、日本の都市の見立ては、東京の次は大阪でもなく名古屋でもなく、福岡だといわれています。それはアジアに最も近く、日本国内で北側に面していながら栄えていること、成長戦略の7つの特区に選出されていることなどの理由が挙げられます。福岡をはじめとした九州地区も、その恩恵に浴する可能性が大きいと同時に、九州ブランドの製品を世界中の人々にアピールする絶好の機会だといえます。


自社株対策が喫緊の課題。ひと時の景気浮揚に浮かれずに


私は長年、中小企業の格付けや倒産取材をする信用調査機関に勤めていました。良好な格付けを付与するための大きなポイントは、「純資産の厚さ」。つまり、内部留保の潤沢さでした。ところが、団塊世代経営者の勇退ラッシュの今、この厚い内部留保が事業継続の足かせになっています。特に九州の中小企業は、厚い内部留保が積み上がっており、増大した自己株式評価の対策が喫緊の課題です。


例えば数十年前の設立当時、1株50円、資本金1000万円の中小企業があったとします。長年の営業努力の結果、純資産が5億円に拡大したとすると、1株あたりの評価額は50倍の2500円に跳ね上がります。相続時や贈与時には時価で評価するため、多額の株式買取資金や納税資金が必要になります。こうした事態に陥らないためには、役員報酬を上げ、利益を最小限に抑える、あるいは戦略的に赤字決算を組むといった対策が求められます。


他方、経費性かつ積立性の高い生命保険を活用した外部留保(オフバランス)は、自己株対策には不可欠です。ただし取引銀行には、外部留保の説明を怠らないようにしてください。アベノミクス効果で景気回復、デフレ脱却、そして悲願の消費税率10%に引き上げへ。ひと時の景気浮揚に浮かれることなく、目立たないがきわめて重要な自社株対策にすぐに着手し、計画的に行うことが最も重要です。



(村上 義文・認定事業再生士)

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