性同一性障害、生保加入への障壁

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2014年05月27日 13:10  JIJICO

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JIJICO

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多様化している生保は、加入範囲が広がりつつあるが…


最近、性同一性障害の人が死亡保険の契約を受け入れてもらえなかったという事例がありました。生命保険の契約は、「病気で継続した治療を続ける必要がある」「病気になって治療を受けて完治した」など、身体的な健康告知をしなければなりません。一般的に加入しづらい順番として、医療保険、ガン保険、死亡保険の順になりますが、一時金で保険料を払うものであれば、加入できるものもあります。


多様化している今の生命保険は、数年前よりも健康・治療・入院の告知の結果、加入できる範囲が広がったように思います。例えば、高血圧の人が血圧の上昇を抑えるために服薬していた場合、医療保険の契約が可能な保険会社は限られていました。その保険会社は「今までの被保険者データの統計上、受け入れても問題ないから」という理由で受け入れていたようです。


今では、ほかの保険会社にも血圧の数値といったデータの蓄積があるためか、引き受けてくれる保険会社も増加しています。慢性的な疾患のような病歴があっても、保険会社の求めている一定条件をクリアすれば、加入できる保険もあります。これらは、被保険者のデータの蓄積と分析、実際の給付金や保障額の支払いをしたとしても、一定の利益が出るような保険料を取り入れることで解決された商品です。


加入が難しい場合には、国の社会保険制度を利用


では、性同一性障害の場合はどうでしょう。性同一性障害の治療を受けているという告知をした結果、死亡保険契約の引き受けがされなかったことは、この障害によって治療を行ったり、病気になったりする可能性がどの程度なのか、結果的に亡くなる可能性が高いのかなど、統計を取れるほどのデータが保険会社に揃っていないと推測されます。


実際、私も大手保険会社以外の各保険会社に問い合わせをしてみたところ、医療保険、死亡保険、がん保険について、いずれも不透明な回答に終始しています。どのような状態であっても、加入したい気持ちが高い人であれば、契約をする前に申し込みと健康告知によって回答を待つという手順を、何ヶ所かで行うことはできるでしょう。しかし、とても地道で長い道のりです。


結果的に加入できなかった場合、経済的に大きなリスクを補ってくれる死亡保険ほどの準備は難しいかもしれませんが、国の社会保険制度には亡くなった場合に金銭的な安心となる「遺族厚生年金」「遺族国民年金」があります。支給される要件を確認し、支給対象となれるよう国民年金保険料や厚生年金保険料をきちんと払うことで、経済的リスクを軽減させるのも一つの方法といえるでしょう。



(堀口 雅子・ファイナンシャルプランナー)

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