外国人入学拒否、法的に問題なし?

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2014年05月28日 13:10  JIJICO

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JIJICO

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外国人と日本人を区別すべき合理的な理由があるかどうか


外国人であることを理由に学校への入学を拒否することについて、具体的にどのような法令が問題になるのでしょうか。


まず、憲法14条1項は、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と平等原則を定め、これを受けて、教育基本法4条1項は、「すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育をうける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない」と定めています


この平等原則は、基本的には立法機関や行政機関等の公権力に対し、国民を平等に扱わなければならないことを定めたものです。平等とは、各人の事情の相違を無視した絶対的な平等ではなく、それぞれの相違に応じた相対的な平等という意味です。逆にいえば合理的な区別は許容されるといわれています。ここに「すべて国民は」となっているため、外国人は含まれないとの疑問もないわけではありません。


しかしながら最高裁は、「憲法14条の趣旨は、特段の事情の認められない限り、外国人に対しても類推されるべきものと解するのが相当」と判断しておりますので、外国人であるというだけで日本人と差別をすることは、平等原則違反、すなわち憲法違反となり、教育基本法にも違反することになります。ただ、前記のとおり、合理的な区別自体は許容されるのですから、外国人と日本人を区別すべき合理的な理由がある場合には、平等原則違反にはなりません。


私立学校の入学資格の決定は、自主性も尊重されなければならない


外国人の入学拒否という問題が、公立の学校であれば直ちに平等原則違反の問題として論ずれば良いのですが、私立の学校の場合はそうはいきません。なぜなら、私立の学校は、立法機関や行政機関等の公権力ではないため、団体としての自主性が尊重されなければならず、入学資格をどのように考えるのかは、本来的にはその団体が自由に決めて良いはずだからです。この点は、教育の公共性と団体の自主性をどのように調和させるのかという難しい問題を孕(はら)んでいます。


最近、埼玉の専門学校が、外国人入学を拒否したとして話題になり、行政側も「教育基本法の定める教育の機会均等は外国人にも可能な限り適用されるべき」として、公正な選抜方法に改めるよう依頼したそうですが、具体的な規制権限を定めた法令が存在しないため、それ以上のことは何もできなかったようです。


ただ、国境を越えた人の往来が激しくなっている現代社会において、公共性の重視される教育という場面で合理的な理由もなく外国人を差別するなどということは、やはり国際社会に背を向けるものとの誹(そし)りを免れないのではないでしょうか。



(田沢 剛・弁護士)

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