ネット中傷を許さない法的対応策

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2014年05月28日 15:10  JIJICO

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ネット社会において「相手方の特定」が大きな壁に


インターネットの掲示板やホームページ、SNSなど、個人が簡単に情報を発信できる環境が充実している現代。そのような中で、法人や個人にかかわらず、ネットで誹謗中傷を受ける事例が多発しています。そのような場合、どのような法的対応策があるのでしょうか。


誹謗中傷行為は、被害者の権利(名誉やプライバシーなど)を侵害する民事上の不法行為です。また、悪質な場合には刑法上の名誉毀損や侮辱罪、業務妨害罪などに該当する可能性もあります。しかし、相手の法的責任を追及するためには、中傷をした相手の特定が必要。原則匿名のネット社会において、この「相手方の特定」が大きな壁になっているのです。


刑事事件になり得る場合には、警察が捜査をして犯人を特定する可能性もありますが、これはごく一部。多くの場合は、被害に遭った側で情報の削除を求め、相手方の情報を特定する必要があるのです。


まずはプロバイダに対して発信者情報の開示を求める


では、実際に被害に遭った場合にどのような手段をとれば良いのでしょうか。


まず、「プロバイダ責任制限法」4条1項に基づき、プロバイダに対して発信者情報の開示を求めるという方法があります。ただ、複数のプロバイダを経由して接続している場合には、経由しているプロバイダすべてに対し開示請求をしていかなくてはなりません。また、相手方の情報を特定するためのログが保存されているかどうかということも問題となります(多くの場合保、管期限があります)。さらにプロバイダ側が「裁判で判断されない限り開示できない」という対応をすることもあります。この場合には訴訟を選択する必要もあるでしょう。こうして相手方が特定できた時点で、やっと相手方に対し賠償や削除を求めることができるのです。


中傷の拡散を防ぐため、管理者やプロバイダに速やかに削除要求を


しかし、上記の手順だけでは対策としては不十分です。なぜなら書き込みが残っている限り、その書き込みを第三者が見る危険が残り、また第三者により中傷が拡散されることで、より被害が拡大する危険も残されています。そのためには、書き込みを速やかに消去することが何より重要です。これについては、裁判外で管理者やプロバイダに対して、削除要求を求めることが第一です。掲載場所(URLや掲示板の名称、書き込みの日付など)、掲載情報(被害の内容)を明記し、管理者やプロバイダに削除を求めます。この場合は、「削除を求めた」ということを記録するために内容証明郵便を利用することが望ましいでしょう。管理者やプロバイダが削除に応じない場合には、侵害情報削除の仮処分などの訴訟手続きへと進むことになります。


このように、ネット中傷に対しては「ネットの匿名性」故に、法的手段の追求が容易ではないといわざるをえません。現在では、プロバイダや管理者の対応に委ねざるを得ない部分が多いのです。万が一、ネット中傷を受けた場合に、変に反論したりして炎上させてしまっては元も子もありません。まずは冷静になって対応することが一番の対策です。



(半田 望・弁護士)

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