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東京都は、「青少年の健全な育成に関する条例(青少年健全育成条例)」による「不健全図書類」として、2冊を指定することを発表しました。このうち出版大手の「KADOKAWA」が4月に発行したマンガ「妹ぱらだいす!2」は、近親者間の性行為を描く内容で、「社会規範に反する性交を著しく不当に賛美している」という審議会からの答申に基づき、同条例8条1項2号に該当するとされました。
青少年健全育成条例の8条1項2号とは、強制わいせつや強姦、児童買春、近親者間など、著しく社会規範に反する性行為をあたかも社会的に是認されているかのように描いたり、著しく詳細に、あるいは過度に反復して描いているような、「青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく妨げる」おそれのあるマンガやアニメに対する規制として、平成22年の改正で盛り込まれました。その改正後、初めて同条項での指定がなされたということです。
青少年健全育成条例では、以前より「著しく性的感情を刺激」する、または「著しく自殺若しくは犯罪を誘発する」(8条1項1号)ような描写のある「不健全図書類」について、書店などで18歳未満の青少年に販売することを禁止し、「青少年が閲覧できないようビニール袋やひもで包装すること」「店員から容易に監視できる場所に一般図書と区分して陳列すること」を義務付けていました。しかし、平成22年の改正により、社会規範に反する性行為を「著しく不当に賛美する」場合も対象にするとともに、その図書類が短期間に「不健全図書類」としての指定を繰り返した場合、「出版社を公表することができるもの」としました。
本条例の合憲性については、まず、「本条例が青少年の知る権利を侵害するものであり無効ではないか」という疑問点が挙げられます。この点、確かに青少年にも「知る権利」は憲法上保障されていますが、「青少年の判断能力を重大かつ永続的に弱化させる見込みがある」と認められる場合には、青少年の自由に対し公権力が直接的に介入することも許されると一般的に解されています(いわゆる限定されたパターナリスティックな制約)。
この場合の制約も必要最小限であることを要しますが、「青少年が閲覧できないようビニール袋などで包装する」、または「成人コーナーに並べる」という程度の制約では必要最小限と考えられ、「青少年の知る権利を侵害する」とまでは言えないように思います。
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また、本条例に基づく具体的な「不健全図書類」の指定が、「出版社またはマンガ家の表現の自由を侵害するのではないか」という疑問点も挙げられます。表現の自由の重要性に鑑みれば、その規制が合憲といえるためには、規制目的が重要であり、手段が目的と実質的関連性を有することを要するというべきです。この点、「青少年の健全な育成を図る」との本条例の目的は重要といえます。
他方、手段についてですが、同条例の現行の運用はマンガ・アニメ分野に精通した嘱託の専門委員が、同条例の8条1項2号に該当する可能性のあるマンガやアニメについて、その芸術性や社会性、諧謔(かいぎゃく)性などの趣旨を調査し、審議会に報告を行うという形式をとっており、目的との「実質的関連性が何ら認められない」とはいえないでしょう。これに対し、将来この適用審査の慎重な運用が担保されない場合は、手段と目的との「実質的関連性がない」という評価の生じる余地もあるでしょう。
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