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「国って本当にあらゆる所から金集めるんだなぁ」「死んでも税取られるとかほんとないわー」。死んだ人の財産に一定の税率をかけて徴収するという「死亡消費税」。昨年6月に政府の会議で経済学者が提案したものだが、ここにきて、いくつかの雑誌が取り上げ、関心が広がりつつある。
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人が亡くなったときの税金といえば、遺産を相続したときにかかる相続税があるが、死亡消費税は、それとどう違うのか。また、死亡消費税には、どういった狙いがあるのか。大和弘幸弁護士に聞いた。
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「死亡消費税は、昨年6月に首相官邸で開かれた『社会保障制度改革国民会議』で東大の伊藤元重教授が提案したものです。議事録によると、死亡時点の残った遺産に一定の税率をかけて徴収するものです」
相続税とはどう違うのだろうか。
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「相続税は、一定の金額以上の遺産を残した一部の資産家だけが対象となります。一方、死亡消費税は、遺産の金額にかかわらず、すべての死者の財産に税金をかける点が大きく異なります」
死亡消費税が導入されたら、どんな影響があるのだろうか。
「伊藤教授の『死亡消費税』は、マクロ経済の視点から、新たな医療財源を確保するための一提言にとどまっていると思います。理論的整理や他の税制との調整など、議論が詰められているわけではありません。
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ですから、今の時点で『死亡消費税が導入されたら?』という問いに正確に答えることは困難です」
では、導入を検討するとしたら、どんな点がポイントとなるのか?
「たとえば、死亡消費税をとられるくらいなら、資産を子や孫に贈与しようと生前贈与を考える人も増えるかもしれません。
ただ、人々がどんな行動を取るかは、死亡消費税や贈与税の税率や、贈与税の基礎控除額によって変わってきます。また、いま話題の教育資金一括贈与非課税制度の適用などによっても、対応は分かれそうです」
このように大和弁護士は説明する。
「さらに、死亡消費税の対象とされる『死亡時の遺産』が何を指すのかによっても、事情は変わってくるでしょう。不動産だけなのか、預貯金や現金も含まれるのか、当局はどうやってそれを捕捉するのかなど、問題点は多そうです」
となると、「死亡消費税」が実現する可能性は低い?
「伊藤教授も、将来のどこかの時点で検討が必要となる『大胆な改革』の一例として、死亡消費税を挙げており、ただちに導入するべきと提言しているわけではないようです。
重要なのは、『死亡消費税』が提案された背景でしょう。それは、増える社会保障費用について、若い世代だけではなく、高齢者本人も負担増を甘受すべきだという考え方です。今後、社会保障改革を考えるにあたって、これは避けて通ることのできない論点でしょう」
【取材協力弁護士】
大和 弘幸(やまと・ひろゆき)弁護士
やまと法律会計事務所 所長
事務所名: やまと法律会計事務所
事務所URL: http://yamato-law-accounting.com/
(弁護士ドットコム トピックス)
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