36協定の形骸化、労働者を守る対策提言

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2014年06月01日 15:10  JIJICO

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JIJICO

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36協定(サブロクキョウテイ)とは?


企業などでは、年度初めに「36協定」の回覧が回ってくることもあって、「これはいったい何なのか?」と思う人もいるでしょう。36協定とは、労働基準法第36条の「時間外及び休日の労働に関する労使協定」のことです。これを略して一般に「36(サブロクやサンロク)協定」と言われています。


どういう協定なのかというと、時間外・休日労働をさせることに対する免罰効果(処罰されない手続き)しかないものです。実際に労働させるには、労働協約又は就業規則などに、「時間外・休日労働を命ぜられたら労働すべき」という根拠を定めておく必要があります。


また、就業規則に定めがあれば、36協定の締結を拒んでも労働義務を負うという判例も出ています。つまり、36協定は「残業が発生したら残業してね」「OKです」という労使の意思表示です。


なぜ36協定は形骸化しているのか?


36協定は、締結し、かつ、労基署長に届け出なければ効力を生じません。また、厚労大臣の定める基準に達しない協定には、労基署長が助言・指導できます。協定の当事者は、「労働者の過半数で組織する労組か労働者の過半数を代表する者でなければならない」という決まりもあります。


まず、労働基準監督署は「助言・指導」しかできませんから、法令違反の内容で届けられていても内容の変更はできません。現実に、有名な企業でも国の定める基準の1年360時間(原則)の延長時間を3倍近く超える協定書を出しているところもあります。また、協定当事者は「民主的な方法で選出すること」となっていますが、組合の無い会社では、日常からこのような意見交換をしていないでしょうから、誰を選ぶと言ってもわからないことも多いでしょう。まして、候補者が一人だったら選ぶ余地もありません。


長時間労働削減が叫ばれながらも、「企業活動を妨害してはならない」という点で行政も強制的対応ができないのが見てとれます。それが、世間には形骸化していると思われる所以です。


労働者を守り、選ばれる会社になるために


数年前から、企業数より18歳人口が少なくなっています。今後は「就職希望者争奪戦」が本格化します。そんな時代に選ばれる会社とは、どのような会社でしょうか。


就業規則が整備され、法令が遵守されている。個々の社員が生き生きとし、自らの仕事に誇りを持ち満足感を得ている。顧客に愛されている。多様なライフスタイルを認め、ワークライフバランスが取れている。そんな会社や職場ではないでしょうか。


これらの実行に莫大なコストは不要です。必要なのは経営陣のやる気。労働者を「搾取の対象」と見るか、「ビジネスパートナー」と見るかの違いとも言えるでしょう。



(佐藤 憲彦・社会保険労務士)

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