軽減税率というのは、特定品目の税率を標準税率より低くすることです。平成26年4月1日に消費税率は5%から8%に引き上げられましたが、平成27年10月1日からは、さらに10%に引き上げられることが予定されています。この引上げにより消費税の負担が、特に低所得者層に重くなることが予想されるため、食料品などの生活必需品については軽減税率を導入しようという考えがあります。
軽減税率は諸外国でも広く実施されています。食料品や水道水、新聞、書籍、医療品等について、軽減税率もしくは非課税とするケースが見られます。このような軽減税率は、一般的には消費者にとって有利と考えられますが、慎重な検討が必要です。というのも、以下のようなデメリットが予想されるからです。
例えば、よく見かける玩具つきのお菓子。お菓子は食品なので生活必需品になる余地がありそうですが、玩具は生活必需品にはなりません。また、付録つきの雑誌で、女性誌にみられるエコバックのような付録は、生活必需品として認められるかもしれません。玩具つきのお菓子、お菓子つきの玩具など、売り方によっては、消費税がかかったり、かからなくなったりするかもしれないのです。加えて、そもそも何が生活必需品かを線引きする基準が難しいので、その範囲がどんどん広がっていく可能性があります。このような線引きの難しさは、消費者に混乱をもたらすことに加え、生活必需品が拡大して思うように税収が伸びないと、さらなる税率の上昇を招きます。
「食品」の取り扱いについては、諸外国の事例でいくつか混乱するケースが紹介されています。ドイツでは、ファストフード店の店内で食べると、「外食」の扱いなので消費税がかかりますが、テイクアウトは「食品」なので消費税がかからないそうです。カナダでは、ドーナツ5個までは消費税はかかりませんが、6個は「贅沢」として消費税がかかります。今の時代で、外食を一律「贅沢」とするのも疑問があります。「セルフサービスなら贅沢にはならないのではないか」という意見もありそうです。消費者サイドの混乱に加え、販売サイドの事務負担も相当なものとなることが予想されます。その負担はコストに跳ね返り、値段が高くなって消費者の不利益となるかもしれません。
さて、軽減税率の事例として挙げた欧米諸国ですが、消費税率はイギリス17%、ドイツ19%、フランス19.6%です。低所得者保護を目的とする軽減税率ですが、日本の10%の段階で市場全体を混乱させてまで導入する意味があるかどうか疑問です。というのも、低所得者の保護が目的であれば、現金給付などの代替案の方が混乱は少ないのではないかと考えられるからです。
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