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「お薬手帳」が誕生した背景には悲しい事故があります。別々の病院から抗ウイルス剤と抗がん剤を処方され、飲み合わせが悪く重い副作用が出た患者が亡くなったのです。この経験を踏まえ、患者と医師・歯科医師・薬剤師が服用中の薬の情報を共有し、服用事故防止対策としての「お薬手帳」が導入されました。
阪神淡路、東日本両大震災時、救急医療現場においてスムーズに、かつ適切な応対ができたのは、この「お薬手帳」のためと言われています。私たちはいつ大きな災害に遭遇するか、また、突然の病に倒れるかわかりません。また、ジェネリック医薬品への変更確認にも、「お薬手帳」は役に立ちます。
人間の記憶とは、曖昧なものです。多くの種類の薬を服用している人や、特に高齢者は、服用中の薬が混乱してしまうこともあります。「何のお薬をご服用ですか?」と聞いても、本人もわかっていないことがありますが、「お薬手帳」を所持していれば、正確な話が聞き出せます。
また、「スマホに情報が入っているから、大丈夫」との話もありますが、スマホのアプリ情報や患者の手帳情報は、あくまでも本人の個人情報で、医療関係者は共有することができません。さらに、薬の名前は似たような名前が多く、本人が間違って記録していれば、大きな間違いが起きてしまいます。
「お薬手帳」は、薬のプロである薬剤師が責任を持って記入しています。そのページには、患者の病歴の経過、処方内容、医療機関名などが記載されている大切な歴史でもあります。
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先日、私の父が緊急入院した際、「お薬手帳」を持参したので、その場で適切な治療を受けることができたと本人も話していました。緊急時、また、それ以外でも、「お薬手帳」の有無で治療の適切さに違いが生まれる場合があります。微々たる金額でリスクを負うことは、賢明な考えではありません。20円の価値は、十分にあると思います。
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