日本の若者は自信がない? 調査結果を深読みすると実は…
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2014年07月02日 18:11 スタディサプリ進路
2014年6月に「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(※1)が公表された。
世界7カ国の13〜29歳の男女を対象にした意識調査なのだが、このなかで「自分自身に満足している」という質問に「そう思う」と答えたのは
1位 アメリカ…86.0%
2位 イギリス…83.1%
3位 フランス…82.7%
4位 ドイツ…80.9%
5位 スウェーデン…74.4%
6位 韓国…71.5%
7位 日本…45.8%
という結果で、日本は極端に満足感が低かった。
あまりに低い数字が注目され、「日本の若者は自己評価が低い」「自分に自信がない」などと新聞やテレビなどで報道された。
そう言われている高校生の皆さんはどう思うだろうか?
「そんなことはないよ!自分が好きだよ!」と言う人もいれば「うーん、結構そうかもな〜」と言う人もいるだろう。
北海道大学教育学部で心理学を教える加藤弘通准教授は、今回の結果に対して「違う見方がある」と言う(※2)。
北海道大学教育学部で心理学を教える加藤弘通准教授
まず、加藤先生は「自分は役に立たないと強く感じる」という質問に注目した。
ややこしいのだが、この質問では「そう思わない」ほど「自分は役立つ」と感じていることになる。そこで「そう思わない」割合を見てみると、日本はアメリカとほぼ同率で5位。7カ国のなかでも真ん中あたりにランクインしていた。
「この結果だけを見ても、日本の若者の自己評価は世界的に見て決して低くないとわかります」
という加藤先生。
さらに日本の若者は「自分は役立つ」と思うほど「自分自身に満足している」傾向が強いことがわかった。そしてこの2つの質問に相関関係があるのは日本だけの特色なのだという。
「つまり、日本の若者は自分が誰かのために役立つ存在だと思えたとき、自分に満足する傾向があることがわかりました。世間では、『最近の若者は無責任、自己中心的』と言われがちですが、とてもまじめな若者の姿が浮き彫りになったと思います」
ちなみにアメリカやイギリスでは「自分には長所があると感じている」ほど「自分自身に満足」しており、韓国やフランスでは「今が楽しければ良いと思う」ほど「自分自身に満足」している結果となり、何を基準に「自分自身に満足」するかは国によって違うことがはっきりわかったのだという。
加藤先生はこう続ける。
「実は世界共通の傾向として、10〜20代の若者の自己評価は下がっていることがわかっています。昔と違って今は社会に出る時期が先送りされていますよね。10〜20代は心も体も成熟し、誰かのために役立つ力は十分あるけれど、社会的には自立していない宙ぶらりんの時期。役立つことこそが自己肯定感につながる日本の若者にとって、辛い時期になるのは当然。それが今回の調査でここまで満足感が低い理由のひとつだと思います」
加藤先生はもうひとつ、日本の若者の自己肯定感が低くなる理由をあげてくれた。
「もしかすると、日本ではオールマイティを求める傾向が強すぎるのかも。日本では勉強だけ得意、スポーツだけ得意という人より、どっちも得意な人のほうが評価は高い。でもそんな人はなかなかいません。そうではなく、もっと一人ひとりの得意分野を評価して伸ばす雰囲気があれば、『今のままの自分でいいんだ』と思える若者が増える気がします」
ではこの時期の若者はどうすればいいのだろうか?
「『自分は役に立たないかも?』などと悩んだりするのは、周囲やより広い世界との関係のなかで、自分を客観的に見るだけの思考力が身についたのだと自覚し、自分を否定しすぎないことが大事です。今は将来高く飛ぶために深くしゃがみこんでいる時期、と前向きにとらえてほしいですね」
(参考資料)
※1:「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(内閣府)
※2:「自尊感情とその関連要因の比較:日本の青年は自尊感情が低いのか?」(有識者の分析より) (http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/thinking/h25/pdf_index.html)
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