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若い男性が猫をおりに入れて川に沈める。比較的浅い川だが、猫はいつ溺れ死んでもおかしくない。そんな状況を男性はスマートフォンで撮影し、ネット中継した。生中継を見ていたネットユーザーからは「まじでやめとけ」「通報するぞ」と強い非難を浴びていた。
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報道によると、猫を沈めたのは、長野県小谷村のアルバイト男性(29)。6月29日昼過ぎに川に沈め、夕方に川に戻ってきた際には死んでいたという。警察は動物愛護管理法違反の疑いがあるとみて、任意で事情を聞いている。
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男性は「猫がたびたび家に入ってきて台所や食卓を荒らして困っていた。殺すつもりで川に放置した」と話しているという。男性は被害に遭っていたことを訴えているが、今回のケースにはどんな法的問題あるのだろうか。ペット法学会事務局次長をつとめる渋谷寛弁護士に聞いた。
「動物愛護管理法44条では『愛護動物をみだりに殺し、または傷つけた者は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金に処する』と定めています。
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今回は、猫を川に沈めて殺すという悪質なケースですので、起訴される可能性があるでしょう」
さらに猫を殺しただけでなく、その様子をネットで中継していた。
「困っていることを訴えたかったのか、殺している様子を見せびらかしたいのか、その真意は分かりませんが、異常なことだと思います。
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中継すること自体は、動物に直接の苦痛を与えることにはならないので、虐待というわけではないでしょうが、手法として好ましくないのは明らかです」
この男性は、ユーザーからの非難のコメントに対し、「なんでイノシシとかシカを殺してるんだよ。なんで鳥獣駆除をしてんだよ。人間に悪さするから殺してるんでしょ。野良猫も同じだろ」と主張していた。
男性が言うように、人間に害悪を与えるような猫は、イノシシやシカと同じなのだろうか。
「動物愛護管理法44条では、保護の対象になる『愛護動物』として、『牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる』をあげています。このほか、人が所有しているほ乳類や鳥類、は虫類の動物も対象になります。
この男性はイノシシやシカを例に挙げていますが、これらは愛護動物の中には含まれません。猫については、人に飼われている場合だけでなく、野生であっても、愛護動物になります」
なぜ、猫とイノシシには違いがあるのだろうか。
「人との結びつきがより強い動物が愛護動物として指定されているからです」
では、この男性のように、猫に家を荒らされるようなことになった場合は、どうすればいいのだろうか。
「非常に難しい問題です。飼い主がいる猫の場合は、飼い主に賠償を求めることもできますが、飼い主がいないのであれば、どうしようもありません。
保健所に持っていって、殺処分を依頼する手もありますが、殺処分に対する批判の高まりを受けて、2013年に施行された『改正動物愛護管理法』では、正当な理由がない場合は、自治体の判断で引き取りを拒否できるようになりました。
具体的にどういう場合に拒否できるのかは、まだ定まっていないのが現状です。
まずは家に入ってこないように対策を施すなど、なるべく被害を減らすようにするべきでしょう。困っているのは分かるんですが・・・」
なかなか悩ましい問題が背景にはあるようだ。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
渋谷 寛(しぶや・ひろし)弁護士
1997年に渋谷総合法律事務所開設。ペットに関する訴訟事件について多く取り扱う。ペット法学会事務局次長も務める。
事務所名:渋谷総合法律事務所
事務所URL:http://www.s-lawoffice.jp/contents_01.html
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