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岐阜県美濃加茂市の現職市長である藤井浩人容疑者(29)が収賄の疑いで逮捕された事件が、波紋を広げている。逮捕されたときから一貫して無実を主張しているうえ、元東京地検特捜部検事という経歴をもつ郷原信郎弁護士が弁護人となり、「藤井氏は潔白だ」と強く訴えているためだ。
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全国最年少市長として知られる藤井容疑者が逮捕されたのは、6月24日。その容疑は、市議だった2013年4月に名古屋市の設備業者社長・中林正善容疑者(44)から、便宜を図る見返りとして、2回にわたって現金計30万円を受け取ったというものだ。中林容疑者が容疑を認める一方、藤井容疑者は「事実無根」だと主張している。
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藤井容疑者は7月8日現在も勾留されており、美濃加茂市は『市長不在』の状況だ。弁護団は8日、勾留が地方自治に対する重大な侵害であることなどを理由に、「即時釈放」を求めて、最高裁への特別抗告を申し立てた。
藤井容疑者の弁護人をつとめる郷原弁護士は、「全国最年少市長の『潔白を晴らす』」と、決意をブログに書き込んだ。なぜ、「潔白」だと考えるのだろうか。また、事件をどのようにとらえているのだろうか。郷原弁護士にインタビューした。
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「この事件の構図はきわめて簡単です。藤井市長は業者から現金を受け取っていません。全くの事実無根です」
郷原弁護士はこのように切り出した。元検事でもある郷原弁護士が、そう断言する理由は何だろうか。
「まず、私自身が藤井市長と接見し、彼の話の内容、人柄や態度など、そういった点を総合的に判断した結果、藤井市長を信用したことですね。
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もう一つは、捜査側の事情です。警察の捜査には、いろいろな『見込み違い』があったのではないかと思わせる点があります。
この両方の側面から考えて、私は藤井市長が言っていることが真実で、贈収賄の事実があったとする警察・検察の見立てのほうが間違っている可能性が強いと考えます」
その「見込み違いがあった」というのは、どういうことだろうか?
「私は検事として、こうした贈収賄事件を現場で山ほど扱ってきました。見込み違いによって、むちゃな捜査を行い、むちゃな逮捕をしてしまうことがあることは、私自身がよく知っています。実際、私がストップをかけなければ、むちゃな捜査が行われただろうというケースもありました。
今回、なぜこんな状況になっているのかはわかりませんが、マスコミ報道が先行・過熱し、捜査側も後に引けなくなってしまっているのかもしれません」
郷原弁護士が考える「見込み違い」とは、具体的には何なのだろうか?
「実は、この事件で贈収賄があったとされる会食の場には、現金を渡したとされる中林容疑者と、受け取ったとされる藤井市長のほかに、もう一人別の『同席者の男性』がいたんですね。
そもそも中林容疑者と藤井市長は、その人物を通じて知り合った。そういう経緯もあって、2人が会うときに同席していたわけです。
現金の受け渡しが『あった』のか、『なかった』のか。この同席者が、どちら側に近い供述をするかで、基本的に、ほぼ勝負が決まるわけです」
同席者は、どんな供述をしているのだろうか?
「推測ですが、警察はこの『同席者』を市長と同時に調べれば、中林容疑者の供述に沿うような供述が得られるという見通しで、強制捜査に着手したのだと想像します。
ところが、全然そうした供述が取れないわけですね。
そこで、警察は同席者を連日、朝から晩まで取り調べて、最後にはけいれんを起こしてひっくり返り、意識を失ってしまうようなところまで過酷な取り調べをした。それでも全然、捜査側の意に沿う供述が得られない。
ここが、完全に見込み違いだったのではないでしょうか。同席者は、インターネットの署名サイトに『(藤井市長は)白だ』と書き込んですらいます。供述はほぼ固まっていると言えるでしょう」
同席者が「白だ」という理由は、なぜなのだろうか。
「同席者は2回とも、会食の間じゅうずっと2人と一緒にいて、現金の受け渡しは見ていないと言っています。彼はどうも、トイレに行く回数が極端に少ない人らしく、会食の席を中座することはないということです」
すると、現場にいた人の数では、現金の受け渡しが「なかった」という人が2人、「あった」という人が1人なわけだ。
「そうですね。しかも、中林容疑者は、多くの金融機関から金をだまし取ったとして、詐欺罪で公判中の人物です。融資総額は3億円を超えていると報じられています。このような場合、そのうちどこまでを刑事立件し、起訴の対象とするか、警察、検察の裁量が働きます。被疑者側には警察、検察に迎合して虚偽供述を行う動機は十分にあり、供述の信用性を疑う余地があります。
警察としては、そこを疑ってしまったら、この事件が完全に崩れてしまうので、そこには一切問題がないかのような説明をして、マスコミもほとんどそれを問題にしていませんが」
中林容疑者が、市長と会う直前に現金を引き出していたという報道があるが、それについてはどうだろうか?
「少額の現金の場合、金の流れを裏付けることが非常に難しいですね。10万、20万というのは普通に財布の中にあるお金ですから、どうやってお金を調達したとか、どのように使ったのか裏が取れません。
本件もまさにそうです。1回目に賄賂を渡したとされる日、中林容疑者が会食の直前にATMで10万円をおろしたと報道されていますが、そこで10万円をおろしたからといって、そのあと会食の場で10万円を渡したかどうか、全くわからない。
10万円なんて、財布にお金が少なくなったら普通におろすお金です。たまたまそれが会食前だったとしても、裏付けにも何もなりません」
藤井容疑者が「市議の給料は安い」と話し、それを聞いた中林容疑者が「暗に賄賂を要求されていると思った」と語ったという報道もあるが・・・。
「たしかに、『議員報酬が少ない』という話はしていたようです。事実、市議としての報酬は手取りで月額30万円もなく、政務活動費は月額1万円だった。
藤井市長は積極的にいろいろな活動に取り組んでいたわけで、旅費や活動費もかかるし、本当にカツカツだ・・・。こんな話はいろいろな人にしているわけで、賄賂の要求でもなんでもないでしょう。
藤井市長は、市議会議員時代も、業者との会食を割り勘にするぐらい、お金に関してはきれいにしていたと言っています」
藤井容疑者は6月24日に逮捕され、現在も勾留されているが、今後、弁護団はどのような動きを考えているのだろうか。
「まずは、藤井市長の早期釈放を求めていきます。
7月4日に名古屋地裁が開示した勾留理由で、裁判官はなんと『罪証隠滅のおそれ』と並んで、『逃亡のおそれ』を挙げました。現職市長に『逃亡のおそれがある』というのでしょうか。こんな理由で勾留を申請する検察官に、それを認める裁判官。こんな人たちに、こんな重要な事件をやらせて大丈夫なのかと、あ然とします。
もう一つの『罪証隠滅のおそれ』についても、捜査側の見立てに沿う供述をしている中林容疑者は、別件で逮捕され、詐欺罪で起訴されています。働きかけようがありません。同席者は、連日警察の過酷な取調べを受けても、現金授受を見ていないと一貫して述べており、供述は固まっています」
弁護団は7月8日、藤井容疑者の釈放を求めて、特別抗告を行った。
「市議時代の30万円の収賄という、現職市長を逮捕する収賄事件としては考えられない事件、しかも、現金授受の立証にも重大な問題がある。それなのに、訳の分からない勾留理由をつけて、まだ身柄拘束での捜査を続けようとしている。市政への悪影響は計り知れません。一刻も早く藤井市長の釈放を勝ち取り、美濃加茂市民の下にお返ししたいと思っています」
郷原弁護士はこのように力を込めていた。
(弁護士ドットコム トピックス)
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