厄介な国際離婚の親権問題 子を守るには

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2014年08月04日 10:10  JIJICO

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JIJICO

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国際離婚に伴う親権問題は特に厄介


近年、グローバル化が進み、異国人同士の婚因が増えている中、それに伴い国際離婚の数も増加傾向にあります。多くの人は、離婚の際に様々な問題に直面しますが、その一つが「親権問題」です。中でも国際離婚に伴う親権問題は特に厄介なものです。


なぜなら一方が「私の国の法律では私に親権があるはずだ」と言えば、もう一方は「いや、しかし、私の国の法律では私に親権があるはずだ」となり、そもそもどこの国の法律によって解決すべきなのか、根本的なことが問題になってくるからです。


この点、「そもそもどこの国の法律によって問題を解決すべきなのか」、つまり準拠法をどこにするのかについては、法律で以下のように定められています。


1、子の本国法が父又は母の本国法と同一であるときは、子の本国法
2、父母の一方がいないときでも、子の本国法が他の一方の本国法と同一であるときは、子の本国法
3、それ以外の場合には、子の常居所地法


つまり、夫が日本人で、さらに子も日本人である場合には、夫と子の本国法が共に日本の法律であり同一なので、子の親権者は日本の法律に従って決められます。同様に、夫が日本人であっても、妻がアメリカ人で子もアメリカ人である場合には、妻と子の本国法が同一なので、この親権者はアメリカの法律に従って決められます。また、子が日本人でなく両親双方の国籍が共に子の国籍と異なる場合、常居所地法は、子が長期にわたり日本で暮らしている場合は日本法となり、子が親元を離れ、フランスで暮らしている場合は、フランス法となります。


子どもの連れ去り問題は、大きな争いとなりがち


しかし、このように、準拠法が決定し、親権者が定められたとしても問題は他にもあります。その一つが、子どもの連れ去り問題です。日本では、離婚に際して相手の承諾なしに子どもを連れ出して別居するような場合、特に違法性を指摘されることはありません。しかし、国際離婚の場合は、子どもと一緒に生活しない親と子の物理的距離がかなり遠くなる可能性があることや、子が海外に連れ去られた時の出国問題などが生じることもあって、連れ去り問題は、大きな争いとなりがちです。それにもかかわらず、現在、海外への子の連れ去りを防止する有効な法律はないのが現状です。


そこで、このような問題に対して採りうる手段の一つとして挙げられることは、婚前にしっかりと話し合っておくことであり、できれば弁護士を介在させて、婚前の同意書を作成しておくことが望まれます。


以上のように、国際離婚については多種多様な問題が含まれます。国際離婚の際には、子のためにも、当事者のためにも、専門家のアドバイスを仰いで慎重に事を進めることをお勧めします。



(中務 未樹・弁護士)

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