AKBの曲に合わせて「みんなで踊ってみた動画」 社員に強制参加させたらパワハラ?

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2014年09月16日 17:21  弁護士ドットコム

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アイドルグループ「AKB48」の曲に合わせて、企業の従業員や自治体職員、地域住民などが集団で踊る動画が話題だ。昨年は「恋するフォーチュンクッキー」がブームになったが、今年も8月発売の「心のプラカード」について、みんなで踊るダンス動画がYoutube上にアップロードされている。


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バッグやジュエリーなどのブランドを展開するサマンサタバタグループは、本社のスタッフやショップの店員たちが踊る動画を公開。佐賀県も「佐賀県418(しあわせいっぱい)プロジェクト」の一環として、踊る地元住民たちを撮影して、公開している。



AKB48は、今年8月から来年7月末にかけて、ビデオアワードの作品を募集しており、今後、さまざまな職場で撮影が行われる可能性がある。ただ、なかには「顔は映りたくない」「踊りを覚えるのが面倒」という人もいるかもしれない。そんな人を会社が無理やり踊らせた場合、パワハラにならないだろうか。中村新弁護士に聞いた。



●強制参加はパワハラの可能性あり


「厚生労働省の定義によれば、パワーハラスメント(パワハラ)とは、『同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為』です」



では、会社が、Youtubeなどで動画配信される予定のダンスについて、従業員に参加を義務づけることは、『業務の適正な範囲を超えて』いるとして、パワハラになるのだろうか。



「多くの場合、このようなダンスの配信は、よい企業イメージを社会に広めるための宣伝として行われるものでしょう。ですから、従業員としての業務と関連がないとまではいえないでしょうね。



ただし、業務そのものの内容とまでは、いいづらい。こうした場合、動画への顔の映りこみを避けたいという理由で抵抗を覚える従業員にまで参加を強制することは、業務の適正な範囲を超えていると評価される可能性があります。つまり、パワハラに該当しかねません」



●同僚間での強制もパワハラに該当


職場での命令ではなく、盛り上がった同僚同士の圧力で参加せざるを得ない・・・という状態もあるだろう。上下関係のない場合での強制もパワハラと言えるだろうか。



「定義での『職場内の優位性』は、いわゆる上司・部下の上下関係に基づくものにとどまりません。人間関係・専門知識などと関連したものも含みます。ですから、同僚間でもパワハラは成立することがあります」



それでも、ダンスの動画を制作したいと考える企業・団体は少なくないはず。職場が気まずい雰囲気にならないよう、どんな形で実施すればよいだろうか。



「そうですね。『原則参加、ただし希望しない者はその限りではない』という業務命令類似の形を取るのは止めたほうがいいでしょう。ダンスへ参加しなかったことを理由とする新たなハラスメント(いじめ等)を極力防止するためです。参加希望者を担当者が取りまとめるなどの形で、任意の参加者を募集したほうが無難ではないでしょうか」



中村弁護士はこう助言していた。せっかくの企画で、職場の空気が悪くならないようにしたいものだ。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
中村 新(なかむら・あらた)弁護士
2003年弁護士登録(東京弁護士会)。現在、東京弁護士会労働法制特別委員会委員、東京労働局あっせん委員。労働法規・労務管理に関する使用者側へのアドバイス(労働紛争の事前予防)に注力している。企業の倒産処理(破産管財を含む)などにも力を入れている。
事務所名:中村新法律事務所
事務所URL:http://nakamura-law.net/



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