Berryz工房と℃-uteはどう切磋琢磨してきたか それぞれの方向性と魅力を分析

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2014年09月28日 10:01  リアルサウンド

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Berryz工房『Berryz工房デビュー10周年記念コンサートツアー2014春~リアルBerryz工房』(ポニーキャニオン)

 ハロー!プロジェクトの中核を担うBerryz工房と℃-ute。9月10、11日に行われた〈Thank you ベリキュー!in 日本武道館〉はそれぞれの魅力を余すことなく凝縮した2日間だった。高度なチアリーディングを思わせる団結・統制力を誇る℃-uteのパフォーマンスと、振り切ったおふざけ、お祭り騒ぎの自由奔放なBerryz工房のエンターテインメント。同じ二度目となる武道館という大舞台で観ることができたのは、ベクトルは違えど、ともに生え抜きの12年選手、真のアイドルの姿である。


(参考:Berryz工房、無期限活動停止に驚き・落胆の声続々 来春までの活動をどう見るべき?


 グループとしての活動歴は異なるものの、元は2002年に行われたハロー!プロジェクト・キッズ オーディションに合格した同期。それが故に、良くも悪くも対比されることも多い。 性質、考え方、方向性…どこをとっても対照的であり、魅力も楽しみ方も全く異なる。いうならば、アメコミと朝ドラくらいの違いがある“ベリキュー”。両グループの関係性と対照的な魅力を紐解いてみたいと思う。


・それぞれのアイドル像


 キッズの中から選出されたBerryz工房が先に結成〜デビューしている(2004年)。選ばれなかった悔しさを胸に、後を追うようにして翌年活動を開始した℃-uteであったが、重なるメンバー脱退・卒業という事態に見舞われる。それがメンバーの結束を強めていくことになり、「アイドル界随一」とも評されることの多い、一糸乱れぬパフォーマンスを生みだす起因となった。この逆境を乗り越えた苦難のストーリーが多くのファンに共感を呼んだともいえるだろう。


 一方、Berryz工房が順調だったかといえば、実際はそうとも言えない。今ほど「アイドルを応援すること」が一般に浸透していなかった時代背景を考えれば、“全員小学生のアイドルグループ”は早すぎた。しかし、彼女たちは苦悩や努力を表に出すことはない。あくまで内面を見せないことで自分たちの信念を貫いている。


 ハロプロキッズ10周年記念BOOK『RIVAL〜12少女の10年物語〜』(2012年)において、このベリキューの相反する“アイドルの在り方”を垣間見ることが出来る。「日常や素が出ても、ファンがついてきてくれるなら(℃-ute・中島早貴)」「“アイドル=可愛いこと”が大前提だから、ある程度の距離感は大事(Berryz工房・嗣永桃子)」という、それぞれの考え方である。近年における「“応援したくなる”アイドル像」と、普遍的な「“雲の上の存在”のアイドル像」だ。


・プロデューサーからみたベリキューの色分け


 プロデューサー・ つんく♂氏が「Berryz工房は公立女子、℃-uteは私立女子」と表現したことがある。作詞における主人公の設定のことだが、捉え方によっては一般的な校風に例えた、グループ気質の違いとも受け取ることもできる。「女性よりも乙女心を衝いてくる」ことで定評のある、つんく♂流女性主観の恋愛ソングを見ても、楽天的な恋愛感情の多いBerryz工房に対して、℃-uteは深層心理を映していることが多い印象を受ける。ただ、意識しているわけではなく、勝手に色分けされていくという。


 2012年につんく♂氏によるトリックが仕掛けられたことが話題になった。ベリキューそれぞれの別楽曲を同時再生することで、一つの楽曲が完成する『超HAPPY SONG』である。同時再生という音楽的な評価以前に、メンバーとファンへのサプライズとしての意味合いが強い。メンバー本人たちにすら事前に種明かしすることは無かった。それぞれのアルバム楽曲として収録し、コンサート披露、各楽曲が支持を得る過程を踏み、最終的にファンが見つけたことで、その価値は大きくなった。


 元曲はBerryz工房はディスコサウンドの「Because Happiness」、℃-uteはバラードの「幸せの途中」という全く別タイプの楽曲だったことも、ベリキューの色分けなのかもしれない。


 同じ事務所で、同じプロデューサーが作詞作曲を行ってきた。ほぼ同じ環境で育ってきたベリキューは全く異なるグループに成長した。明確なコンセプトの違いがあったわけではなく、成長過程で自然と色分けが出来てきたというところが興味深い。


・Thank you ベリキュー!in 日本武道館


 9月10日<℃-ute(910)の日スペシャルコンサート2014>は大雨洪水警報が発令されるほどの豪雨に見舞われたが、翌11日<Berryz工房デビュー10周年記念スッペシャルコンサート2014>では雨の予報が大きく外れ、開演前には晴れ間が広がった。「最強雨女・矢島舞美率いる℃-ute」と「晴れ女集団・Berryz工房」の伝説がまた一つ増えた。思えば今年3月30日に行われた<ひなフェス 2014>においても、℃-uteメインの昼公演は朝から一部交通機関の乱れが出るほどの暴風雨であったが、Berryz工房メインの夜公演開演前には虹がかかるほどの快晴になったことも記憶に新しい。天候まで影響を及ぼし、それまでもが両極端という、ベリキューとは運命の巡合せなのではないかとすら思えてくる。


 両日とも、本編ラストにベリキュー12人によるコラボレーションを魅せた。10日に歌われたのは、℃-ute「忘れたくない夏」。2009年10月25日、℃-uteの梅田えりか卒業公演のラストに歌われた曲だ。Berryz工房は来春をもって無期限活動停止を発表している。ベリキューとして同じステージに立つのは今回が最後になるのかもしれない、少なくともベリキューで過ごす夏は来年以降は訪れることはない。2009年に続き、2014年も“忘れたくない夏”になった。


 対して11日は、Berryz工房「一丁目ロック」。ライブ後半のラストスパートとして欠かすことの出来ないロック・ナンバー。元SEX MACHINEGUNSのリズム隊によるブラスト・ビート級のオケが武道館に響き渡り、広いステージを12人のベリキューメンバーが縦横無尽に駆け巡る。バラードなどを抜いた、この日の爽快なセットリストにBerryz工房らしさを感じ、その雰囲気のまま終わるのだと思っていたのだが、大サビに入った途端、横一列並んだ12人がアカペラで歌い上げた。


 〈笑顔は私の宝物だから 大好きに大好きになって欲しいの〉


 お互いの笑顔を確認するかのように、そう歌う姿は、この上ない満足感と誇らしげな表情に見えた。同期であり、仲間であり、ライバルであり。対照的で似ても似つかないグループであるが、「仲が良い」という言葉で片づけることの出来ない関係、“絆”を改めて感じた瞬間である。


 モーニング娘。に憧れてアイドルになった12人のキッズたちは、いつのまにか、ハロー!プロジェクトの最年長グループになった。少女から大人の女性になったアイドルたちの眼に、武道館ステージから見えた景色はどのように映っていたのだろう。そして、その先に何が見えたのだろうか。(冬将軍)



このニュースに関するつぶやき

  • Berryz工房ってなんかみんな普通な感じがして地味。容姿の派手さだけが目立つ。℃-uteも派手さはないけど℃-uteの場合は踊りのプロ集団って感じがするね
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