お母さんたち、眉間に皺寄ってませんか?―― 心がかたくなる前に

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2014年10月07日 10:01  MAMApicks

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先日、実家の母からこんなメールがあった。

「今日バスで、ベビーカーに乗っている2歳くらいの女の子が、お母さんに『抱っこして抱っこして』と泣いていた。お母さんは『抱っこできない』とその子を放っていたから泣いてうるさかったの。どうして抱っこしてあげないのかな?」


耳も頭も痛くなるような内容だ。似たような経験は覚えがある。
今、親として思う正直な気持ちを返すことにした。

「多分眠くてぐずってるだけだから、そのうち寝ると思ったんじゃないかな。放っておくしかない時もあると思うよ」

そこにまた母からの返事。

「昔はベビーカーごとバスに乗ることはなかったし、今はそのへんは違うのかな。難しいところだね」

マズい。これは祖父母世代の「昔はこうじゃなかった」攻撃か!?
母はこういうこと言うタイプじゃないと思っていたんだけど……どうする?
しばし迷った末にこっちのコマンドを選んだ。


「実際、ベビーカーをたたんでもそんなに場所が空くわけでもないし、抱っこして寝ちゃったらまたベビーカーに乗せるのは大変だもの。ぐずってるなら周りがみんなであやしてあげたらいいんじゃないかな? 私はできるだけそうしてるけど」

どうだこの正論!もう言うことはないだろう!!!

「それがあやしてあげられる雰囲気でもなかったの。あやしたら怒られそうだった。私も、孫がいるからいつも暖かい目で見ているよ」

予想外のところにボールが放られて、呆気に取られてしまう私。
あー、そういうことね……うん、ある、かもね……。


子どもが小さいうちは公共の乗り物に乗るのはドキドキする。
積極的に外出しているほうだとは思うが、それでも娘を連れて外出するときに緊張しないのかというと、まったくそんなことはない。

娘は結構寝ぐずりするので、うまく眠るタイミングを逃してしまうとギャン泣きだ。
最近はさらにイヤイヤ期の兆候なのか、ちょっと気に入らないことがあると怒りと泣きの応酬。機嫌が悪くなった時のためにどこへ行くにもおやつやジュースは欠かせないし、大好きなキャラクターが登場するスマホアプリだって常駐だ。

ベビーカーで行動するときはできるだけひとつのところに長く留まらないようにしている。一箇所に停止するとすぐに、「ここから出たい!抱っこして!」のサインがあるからだ。

できれば外出先では泣かれたくない。泣かれるのは親だって恐いし、嫌なものだ。だから一度眠りについてくれたら、できる限り長く寝て欲しいし、睡眠を邪魔したくない。

そう思うと、ベビーカーを動かす手が慎重になる。電車を降りるときも、エレベーターに乗るときも、「起きないでね、まだ起きないでね……」と心の中で復唱する。

ところが親切な人が、「手伝いましょうか」と一緒にベビーカーを下ろそうとしてくれる。そんなとき、「いいです、すみません」と救いの手を突っぱねてしまうことがあった。ベビーカーを引っ張られたら、その衝撃で目覚めてしまうかもしれない!寝た子を起こしたくない一心だった。

……これ、一番やったらいけないやつだ。
「良かれと思って人助けしたのに無碍にされた、もう二度と手伝うもんか」と気を悪くしてしまったかもしれない……。

そして、ふと気付く。私、なんて強ばった表情をしてるんだろうと。
追いかけていって「さっきは拒絶するような態度を取ってごめんなさい、娘が寝てるから起こしたくなかったんです、あなたの好意はありがたく受け止めましたから!!!」と弁解したい。……ってもうどこに行ったか分からないので、時すでに遅し。

今回はたまたま心の優しい人が、私を「困っている」と解釈してくれた結果、手伝おうとしてくれたのだろう。しかし、私の表情はまるで鉄仮面。分厚いバリアが張られ、人を寄せつけないオーラを出していたのはたしかだ。


となると冒頭の、私の母がバスで見かけたのもこのような光景だったのではないかと察しがつく。
本当は困っているし、助けてほしい。周りのサポートが身に沁みるほどありがたいことも知っている。でも、切羽詰まっている場合は、周りに白い目で見られてしまっているかもしれないと硬直する。その結果が鉄仮面なのだと。

それを説明したかったが、すでに母とのやり取りも終了していて、説明する機会を失ってしまった。


以前勤めていた会社で、「あなたはシステム職のわりに話しやすいよね」と言われたことがある。ステレオタイプなイメージだけど、SEなどシステム職の人間は頭が堅い、気難しいと思われることが多いので、その固定観念を払拭してもらいたかった。

黙っていても表情は雄弁だ。だから柔和なコミュニケーションのためにできるだけにフレンドリーな雰囲気を出そうと意識していた最中のことだった。

「だって話しかけづらくて仕事が滞るとか勿体無いじゃないですか?」と答えた私はどれだけ有頂天だったことか。そのドヤ顔で今の私に説教してくれてもいいよ……。

子育てをしていると、それまで当たり前のようにできていたことができなくなっていたりする。自然に笑顔が作れないってどれだけ余裕がないのかと自分に突っ込みたくなるが、私に限った悩みでもないのではないか。


鏡の前で表情筋をほぐしてみたら、想像以上にかたくなっていた。
口角を上げてみたり、目を見開いてみたり、ちょっと人には見せられるものではないが、この固くなった表情がデフォルトにならないようにしないと。

そして、表情以上に心がかたくならないようにしないと。眉間の皺を揉むように、心もほぐす方法、あったらいいのだけれど。

真貝 友香(しんがい ゆか)
ソフトウェア開発職、携帯向け音楽配信事業にて社内SEを経験した後、マーケティング業務に従事。高校生からOLまで女性をターゲットにしたリサーチをメインに調査・分析業務を行う。現在は夫・2012年12月生まれの娘と都内在住。

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