「よく稼ぐ夫」と「家を守る妻」の限界 ――ふたりの時間を再配分、仕事も育児も「ほどほど」に

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2014年10月16日 10:31  MAMApicks

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体調を崩した息子を近所の小児科に連れて行ったある朝のこと。
待ち合い室に入ってみると、おぉ、私以外、みんなお父さんと子どもじゃないか!……なんと母親が私だけだった。

■父親「参加」なんて次元じゃない
最近そういうことがよくある。子どもを遊びに連れて行っても、父親+子どもがものすごく多くて、母親+子どもの自分が少数派なことも。

保育園の送迎なんて当たり前。ベビーカーや抱っこ紐でひとりで散歩、移動しているお父さんも、もう珍しくない。電車で1時間以上かかる屋外バーベキュー企画に、単独赤ちゃん連れできたお父さんには、素直にすごい!と思った。

「父親の育児参加」なんて次元じゃなく、若い世代の一部では、確実に、デフォルトで、「父も母もどっちもやるのが当たり前」に意識が変わってきている。


■男だって「育児ストレス」
この前、博物館で「お母さんぽい」説教を子どもにしているお父さんを見かけた時は、「あぁ、この怒り方は普段全面的に育児している人なんだな」と、むしろそのイライラに共感した。「なんかもうこれ限界!」っていう怒り方と、単に短気で激高している状態との違いは、雰囲気でわかるものだ。

男性だって、育児をまともにすれば、女性とまったく同じ育児ストレスにさらされるだろう。同じ構造に入れば当たり前だ。男性も「普通の育児ストレス」を感じるところへ到達しつつある。

でも、この男性たちが、今までと同じ「働き方」をしていたらどうなるだろう。私が「会社人間」だった頃のフルパワーの働き方に置き換えると、あの生活に育児を追加するのは、間違いなく無理だ。

子どもを持つ女性が、「以前と同じ働き方」を目指す時に壁があることはよく言われる。でも、男性だって本気で育児を担うには、「以前と同じ働き方」はできないはずなのだ。

■子育てには「時間」が必要だ ――夫婦の持ち時間の限界
私たち夫婦はフリーランス×2人で育児をスタートし、仕事場=住居だったので、子どもが生まれても、ほどほど仕事と育児をまわせるかなぁ、と淡い期待を持っていた。

しばらくして私が仕事に多少手をつけ始めた頃、ふたり同時に同じ壁にぶつかった。

「そっちが仕事したら、こっちが仕事できないじゃないか!」

赤ちゃんは長時間眠らないし、起きていればどっちかが相手をする必要がある。どっちがやってもいいけれど、夫婦どちらかの時間は、つねに「育児用」に使わなければならないのが現実。

……そう、子育てには「時間」が必要だったのだ。

それまでふたりで2人分の仕事ができていたのが、どう頑張っても1〜1.5人分の仕事しかできない。「産休」とか「育休」とか、そういう制度の完全な外側にいるので、仕事減は収入減。でも、大人ふたりの持ち時間は、24時間×2以上はどう頑張っても作り出せない。

……そう、ふたりの持ち時間には限界がある。

家事はもともと必要だった。でも、新たに必要になった育児時間は、ふたりの仕事時間から配分するしかない。

つい、以前と同じように働けないのは「能力不足かも」と思いそうになるけれど、何のことはない、時間が足りないからできなくて当たり前なのだ。育児を一緒にやるということは、「『ふたりとも』前と同じようには働けない」が当然の大前提にあっていい。

■必要な時間を女性だけが吸収する必要はない
じゃぁ、保育園があればすべて解決!……かというと、ここに若干の「保育園幻想」がある気がする。

保育園や人の手を借りたって、育児にかかる時間はゼロにはできない。そして、子どもの事情(体調、行事)で時間に大きなバッファが必要。その「育児時間」を女性がひとりで吸収しようとする限り、働き方はかなり限定される。

「女性が輝く日本!」というフレーズを聞くたびに、あの言葉の前提に「本来育児家事を担うのは女性」という意識がべたっと張り付いているような気がしてしょうがない。

「あなたの育児家事の時間を外の力を借りて減らします。そうすれば子どもが『いても』安心して仕事ができるでしょ」というような……。ここに、「男性」の顔はない。

むしろ今、輝かないと危ないのは男性の方だ。

会社では限界以上まで働いて、家ではささやかな育児家事をやれるかどうか……。妻には感謝されず身体も心も限界。「相当がんばっている」つもりなのに何かがずれていて、まったく報われない。これで決定的な溝を抱える夫婦は少なくない。

男性も働き方そのものを変える時期が来ている。

■ふたりの時間配分と責任範囲を変えるチャンス
女性がひとりで育児家事を背負うストレスに耐えられなくなっているのは明らかだ。

男性だって実のところ、今どきひとりで収入を背負うのはきつくなっているはず。ウェブ業界にいるとよくわかる。会社なんて簡単につぶれるし、給与が上がる見込みもない。転職を繰り返し、非正規雇用も普通。能力に応じた額を支払う「体力」が会社に無い。

猛烈に働いて「よく稼ぐ夫」と「家を守る妻」なんてモデル、もうとっくに限界だ。

「せーの」で「お互いどっちもやりましょうかね」の方が、現実に合っている。男性はひとりで家族が食べていけるだけ稼げなくていい。でも、育児家事もやる。女性はひとりで育児家事を背負わなくていい。でも、夫の収入減を受け入れ、自分も働いて収入を得る。

今、「ふたりで働き育てる」モデルは、「すごい人たち」すぎる気がする。男性は子どもが生まれても同じ働き方、女性が若干セーブ。そのままふたりとも育児家事もやろうとして、明らかにオーバーワークだ。

「専業主夫」は注目されやすいけれど、男女が入れ替わっただけで、ふたりの時間配分は実は従来型。

どっちもほどほどに働いて、ほどほどの収入を得て、ほどほどに育児家事もやる。……そういう「両方ほどほどモデル」にふたりの時間配分を転換していくことで、「働きやすく育てやすく」ならないだろうか。お互い負担をシェアして、リスクも分散できる。

■制度を生かせる柔軟な感覚を持っているか?
会社が……制度が……障壁はいくらでもある。でも、きっと私たちの「感覚」も大きな障壁になっている。

「ふたりそろって働き方を見直すのが当たり前」という感覚がなかったら、「待機児童ゼロ」になったって、男女の時短勤務や育休が整ったって、女性が育児時間を吸収して男性が働きすぎる状態は絶対変わらない。

雇用のスタイルも個人の働き方も、人生のステップに応じて、柔軟で、流動的なのが当たり前になっていいはずだ。

あの時本気で思った。ふたりとも育児と仕事の時間が欲しい。フリーランスの不安定さを一時的に回避したい。「1〜2年でいいから、ふたりの能力と時間半分ずつセットで1人分にして雇ってくれるところないかなぁ……」


小さな家族が増えたとき、先入観で男女の「役割」に線を引くのではなく、大人ふたりの「時間」を再配分することに、これからの家族像がきっとある。

狩野さやか
ウェブデザイナー、イラストレーター。企業や個人のサイト制作を幅広く手がける。子育てがきっかけで、子どもの発達や技能の獲得について強い興味を持ち、活動の場を広げつつある。2006年生まれの息子と夫の3人家族で東京に暮らす。リトミック研究センター認定指導者。

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  • ダラダラと何を言いたい?育児にストレス?ありえない���줷����常に愛おしいてたまらん�ۤäȤ�����毎日かわいすぎて丸呑みしてまいそうです�ϡ���
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