「子どもの相手」に定型はあるか? ――体験系イベントにおける「親以外の大人」との関わりからの考察

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2014年11月14日 13:01  MAMApicks

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秋になると、あちこちで地域イベントが開催されるのでよく出かける。とあるイベントで子ども向けのコーナーを大学生が運営していた。クイズ、制作系、実験観察系。そのエリアだけ学園祭のようで、素朴で楽しい。小2の息子もけっこう大喜びだ。

■いろいろなタイプのお兄さん・お姉さんがいる
ここで過ごして面白いのが、その大学生たちの子どもへの接し方、なのだ。
いくつかのバリエーションがある。

・Eテレ的テンションのお姉さん
・お笑いテイストで盛り上げようとするお兄さん
・必要なこと意外は言わないお姉さん
・そもそも人と話すのが苦手そうなもの静かなお姉さん
・実験の仕組みを言語能力発達途上の幼児に向かって淡々と説明するお兄さん

大人的には、Eテレお姉さん系が子どもにはぴったりくると思いがちだし、なんとなく安心して任せられる気になる。あまり物静かなお姉さんだと、沈黙が苦手な私は「何年生ですか?」とか、どうでもいい会話を発生させたくなったり、理系お兄さんの説明が子どもにスルーされているのを見かねて何か質問してあげたくなったり。

でも、ここはせっかく子どもたちとこのお兄さん・お姉さんたちの世界なのだから……と思いとどまる。


■子どもの反応は?
そうやってただ眺めていると、意外なことに、子どもはどんなタイプの人が相手でも、どんなアプローチでも、困っていないようなのだ。人のタイプを類型化するほどの集積がないから、先入観を持たず、気持ちは目の前の「スライム作り」や「発電体験」でいっぱい。

お兄さん・お姉さんの方も、どうやら私の余計な心配は本当に余計な心配でしかないらしい。

人と喋るのが苦手そうなお姉さんは、一定の時間が経つと、静かに子どもに話しかけたりもしていて、いい雰囲気だ。実験の仕組み説明が佳境に入ったところで、「つまんない」と消えた幼児に取り残されたお兄さんは、それを気にする様子もない。皆、子どもへのアプローチ手法が固定していない感じがいい。

ぎこちなさ満点でも、なんとなく事態は進行するし、初めて出会った者同志、定型でない関係がその場で生まれている。

あぁ、なんか、これでいいんだなぁ……。

■接し方を「定型化」していたかも?
親になると「子どもにはこう接した方がいい」というようなイメージに支配されやすい。知識を入れ、「○○すべき」と自分を律することが増える。

例えば、「笑顔で接した方が緊張がとける」「指示するよりプラスの提案で誘う」「興味をもって質問する」など、ポジティブな接し方を意識することは多い。

でも、多様なお兄さん・お姉さんたちを見ていたら、私はこういうのを、半ば定型化して「子ども全般」に接する時に「適用」していたかもしれないなぁ……と、思えてきた。

その「定型」にのっかって、一方的にぐいぐい迫り過ぎていたかもしれない。逆に緊張が高まったり、「いいから放っておいてよ」と思う子もいるだろう。実際、自分の子どもには通じるアプローチが、他の子どもにはあっさり拒絶されるなんてことはよくある。

「定型」を適用している限り、子どもの側の細かい変化に気付きにくくなる。「まず相手をよく見る」が抜けていたかもなぁ。

■あれは「定型」じゃない
そういえば、教育や保育の現場で、いいなぁ、上手だなぁ、と思う先生は、子どもに対して、ぐいといきなり踏み込むこともなく、近すぎず、遠すぎず、絶妙な距離感で接しているように見える。あれはきっと、定型的な技術じゃなくて、知識の裏付けのある、細やかな個別の人間関係。

子どもはひとりひとり違うし、私の側も、「子ども向けのスタイル」なんてものは必要ないはず。

もっと普通に接すればいいだけなんだろうなぁ、とぼんやり思う頭の中で『アナと雪の女王』の「♪ありのーままでー」が壮大に流れる。いや、別に無理しているわけでもなく、ありのままのつもりなんだけれどね……。

そのBGMにのって紫色のスライムを手に得意気な息子がもどってきた。なんだかやたら長い時間をかけて色を混ぜるのに付き合ってくれたお兄さんに、心で感謝。

■いろいろな大人に触れること
じっくり黙って待っていてくれるお兄さんも、ちょっと不機嫌そうなお姉さんも、わからない説明を延々と続けるお兄さんも、その姿はきっと子どもの印象に残り、母や父と違う「いろいろな大人がいる」という経験になるんだろう。

たがら、子ども同士はもちろんだけれど、いろいろな大人に接することは、きっと子どもにとっていい経験になるんだろうなぁ、と思うのだ。

子ども向けの体験系イベントが、知的好奇心につながるという親の期待は、とりあえず横においておいておいた方がいい。内容なんてわからなくて十分。でも、たぶん「自分でやれる」満足感と、「親以外の大人」との関わりが「体験」として残る。


意識して見ていると、地域や近隣施設、学校などで開催されるイベントはたくさんある。多くは無料で、運営側も訓練されきっていない感じのゆるいムードで、いろいろな体験ができる。

秋晴れの気持ちいい季節もあと少し。どんどん気軽に参加してみてはどうだろう。子どもが別の大人に接するチャンスだし、自分も意外な発見があるかもしれない。

狩野さやか
ウェブデザイナー、イラストレーター。企業や個人のサイト制作を幅広く手がける。子育てがきっかけで、子どもの発達や技能の獲得について強い興味を持ち、活動の場を広げつつある。2006年生まれの息子と夫の3人家族で東京に暮らす。リトミック研究センター認定指導者。

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  • 面白いですね。主旨にも概ね賛成です。「自分がどうアプローチすべきか」より『相手と自分でどういう関係性・空気をつくっていくか』というスタンスだと思います。
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