EVの航続距離は基本的にバッテリーの搭載容量に依存しており、長距離走行のためにはバッテリーを沢山積む必要が有る。
その場合、「テスラ」車のように大容量のバッテリーを搭載するスペースや、注ぎ込めるコストに余裕が有るクルマはともかく、コンパクトな普及価格帯のEVとなると、どうしても航続距離を犠牲にせざるを得ないのが実情。
そうしたジレンマを解決すべく考え出されたのがHVに充電機能を追加した「PHV」だ。
PHVの魅力はモーターによる「EV走行」と「航続距離」
「PHV」はEVと同様にモーター走行が可能なだけで無く、たとえバッテリー残量が少なくなってもエンジンを搭載しているため、充電スポットを探す必要が無く、安心してドライブを楽しめるのが魅力。
世界の自動車各社から多様なシステムが展開されているが、モーター走行可能な距離も様々。
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今回はそれぞれの違いを整理してみたい。システム別に分類すると以下となる。
・PHV:HVをベースにバッテリーを高容量化、EV走行性能を向上(プリウス、BMW i8等) ・PHEV:EVをベースに加速時など高負荷時にエンジンを利用(三菱アウトランダー等) ・レンジエクステンダー:EVをベースに発電用小型エンジンで航続距離を拡大(BMW i3等)
代表車種を事例にそれぞれのシステムの詳細を見ていこう。
■トヨタ プリウス PHV (FF)
エンジンとモーター(減速時の発電機を兼ねる)で前輪を駆動。
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<走行モード> ・EV:バッテリー残量大の場合はモーターで走行 ・HV:バッテリー残量小や加速・登坂時はエンジンで走行
EV走行での航続距離:26.4km(JC08モード) 駆動用電池:リチウムイオン(総電力量 4.4kWh)
■BMW i8 (PHV 4WD)
モーターで前輪を駆動、エンジンで後輪を駆動。
<走行モード> ・eDrive:モーターのみで走行 ・HV モーターとガソリン・エンジン両方の駆動力を最適制御 バッテリー残量大の場合はモーター走行を優先(発進・追い越し共) バッテリー残量小時はエンジンで発電、加速・登坂時にはエンジンがサポート
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EV走行での航続距離:35km(JC08モード) 駆動用電池:リチウムイオン(総電力量 7.1kWh)
■三菱 アウトランダー PHEV (4WD)
エンジンとフロントモーターで前輪を駆動、リヤモーターで後輪を駆動。
<走行モード> ・EV:バッテリー残量大の場合はモーターで走行 ・シリーズ:バッテリー残量小時や加速・登坂時はエンジンで発電してモーターで走行 ・パラレル:高速走行時はエンジンで走行、加速・登坂時にモーターがアシスト
EV走行での航続距離:60.2km(JC08モード) 駆動用電池:リチウムイオン(総電力量 12kWh)
モーターで後輪を駆動
<走行モード> ・EV バッテリー残量大の場合はモーターで走行 ・レンジエクステンダー バッテリー残量小時にエンジンで発電してモーター走行
EV走行での航続距離:229km(JC08モード) レンジエクステンダー:航続距離を最大300km延長 駆動用電池:リチウムイオン(総電力量 21.8kWh)
このように一口で「PHV」と言ってもエンジンとモーターをシチュエーションに合せて使い分ける「トヨタ プリウス」、両方を合成してパワーアップを図る「BMW i8」、バッテリー容量を活かしてモーターを主に使う「三菱アウトランダーPHEV」、小型エンジンで発電してモーターで走る「BMW i3」といった具合に様々なシステムが存在。
まもなく燃料電池車FCV「MIRAI」が発売されるものの、普及期を迎えるまでは欧州勢の動きからもHVの発展形である「PHV」が当面の主流となりそうな情勢だけに、今後ますます各社の設計思想がシステムへ顕著に現れて来そうだ。
*参考:トヨタPHV、BMW i8、BMW i3、三菱PHEV