![](https://news-image.mixi.net/article/218/218_20141208_89855_003.jpg)
自動車のトランスミッション(ギヤボックス)はいくつもの歯車が組み合わされている(CVTはちょっとちがうけど)。そしてオイルを入れて潤滑している。摩耗や焼きつきなどを防ぐためだ。
これが変速機の基本形だ。
でも、歯車がなければ、摩耗や焼きつきも起こらないのでは? だからオイルもいらなくなるのでは? それは便利かも! でもどうやって動力を伝えるの? 磁石で伝えればいいのです。
マドリッドのカルロス3世大学の研究者が、磁力を使った変速機の開発を発表した。それによれば、磁力で変速するので、摩擦がない。摩耗もしない。したがって潤滑の必要がない。しかも寿命は長くなるというメリットがあるのだ。その性質により宇宙開発において活用が期待されるほか、鉄道や航空機などにも応用することが可能だと見られている。
![Gearless02](http://nge.jp/wp-content/uploads/2014/12/Gearless02.jpg)
変速機なので、入力軸と出力軸で回転数を変えることができる。しかし、途中に接触式の歯車を持っていない。そのため低温での使用や真空での使用にも適している。また、過大な入力があったときには空回りするだけで、壊れることがない。もちろん騒音も振動も減らせる。オイル漏れが周囲に被害を起こす心配もない。実現すれば、非常に画期的な変速機になるのだ。
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![Gearless01](http://nge.jp/wp-content/uploads/2014/12/Gearless01-186x300.jpg)
過酷な条件下での使用に適している
この研究はMAGDRIVEというヨーロッパの研究プロジェクトの支援下で行われたものだ。この研究においては、宇宙空間の厳しい条件下で作動する機構と、常温で使える機構の両方の試作機を作ることが目標となっていた。
宇宙空間用には、低温用プロトタイプが開発された。これは、超伝導を用いたベアリングによって、入力軸と出力軸も接触部分をもたないフローティング式にすることに成功した。磁力は回転力を伝えるだけでなく、振動をふせいで安定性を保つことにも役立つという。マイナス210度もの低温下の真空の状況でもちゃんと回転する。
![Gearless03](http://nge.jp/wp-content/uploads/2014/12/Gearless03-300x218.jpg)
この低温用プロトタイプは、宇宙においてロボットアームやアンテナの支持器、火星探査車など、細かい動きが要求されるいっぽうで、オイル漏れによる汚れを避けたい部分などへの応用が期待される。現在の機構では、低い圧力と厳しい環境のもとで、そういった機器の寿命が制限されているからだ。
もうひとつ、常温で作動するプロトタイプも開発された。こちらが接触する歯を持たない変速機だ。これはより幅広く、鉄道や石油工業をはじめとする機械工業全般に応用が予想される。オイル潤滑の必要がなく、クリーンなので、特に製薬や食品、バイオ医療などの分野での活用が期待できるだろう。
これがどのくらい実用に近いものなのかはまだわからないが、ギヤボックスから歯車がなくなるというのは革命的だ。磁石が回転するというのは、それはそれでまた歯車にはない影響が出そうだが、身近なものにも活用されていく可能性も十分あるだろう。
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