2015年「クラウドファンディング界」注目の動き5選

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2014年12月27日 13:10  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

2014年度にはついに1兆円市場に到達したと見込まれる、クラウドファンディング市場。毎年200%を超える成長を遂げているが、欧米と比較すると日本の市場規模はまだまだ小さい。

そこで、2015年度に国内の市場が飛躍する条件は何かという論点で、主に5つの動きに注目したい。

1:グローバル展開とプラットフォーム化

まず期待されるのが、購入型クラウドファンディングの「グローバル展開」と「プラットフォーム化」である。

グローバル展開でいえば、「MotionGallery」が海外の大手クラウドファンディングサービス「Indiegogo」と提携し、日米同時のプロジェクト掲載が可能になった。

また、日本から「Kickstarter」にチャレンジするケースなど、海外の方にニーズやチャンスがあるプロジェクトに関して、初めからグローバルを視野に入れて展開する手法も増えてきている。

国内のクラウドファンディングユーザーを増やすことも急務ではあるが、間口や選択肢を増やし、プロジェクトオーナーの支援を強化することは非常に重要なポイントとなるだろう。

「プラットフォーム化」という点でいえば、国内の「GREEN FUNDING」 や「WESYM」、海外の「Tilt/Open 」が採用するクラウドファンディングシステムを、ASPサービスとして他社に提供し、パートナーサイトを増やしていくビジネス手法は大いなる可能性を秘めている。

ポイントは、クラウドファンディングサービス事業者として自社でコンテンツを積極的に増やしていくのではなく、自らはクラウドファンディングポータルのような形態を取り、それぞれの強みを持った提携先のサービス経由でプロジェクトと売り上げをつくれることで、合理的でサステナブルなスキームだと言える。

そしてもうひとつ、具体的なプラットフォーム導入事例として注目したいのが、「ECサイト×クラウドファンディング」という新しい形である。

国内では、ファッションブランド「junhashimoto」を展開するFASH internationalが、クラウドファンディングの仕組みを用いた通販・ECサイト「the SHOWCASE」を展開している。

一言でいえば、クラウドファンディングを利用して特定ブランドのオリジナル商品の購入を希望する顧客を募り、期限内に一定数に達したら製造、販売する完全受注生産型のECサイトだ。すでにある程度知られていて固定ファンのいるドメスティックブランドが、EC戦略の一環として同様のモデルを採用するケースは今後増えてくるだろう。

海外でも、米国のメンズファッションECサイト「Gustin」がKickstarterでキャンペーンを立ち上げ、目標額をはるかに上回る資金を確保し、企画していた高品質なジーンズを安価で販売することに成功した。

このマーケティング戦略は、最近注目を集めているスタートアップでファクトリーブランド専門の通販サイトを運営している「Factelier」も採用しており、同じくグロースハックに成功している。

プロジェクトが達成した段階でメーカーに発注するフローのため、必要な材料だけを注文すればよく、余分に資材を抱えなくて済む。しかも、この仕組みなら流通フローのなかで発生する各種マージンをカットできるため、結果的に高い顧客満足度を得ることができ、新規ユーザーの獲得と既存ユーザーのファン化につながるのだ。

これらはほんの一例だが、クラウドファンディングのシステムをどのように使い、どのようにして最適な仕組みを構築するかということに、成長の鍵があることは間違いないだろう。購入型クラウドファンディングは群雄割拠の様相を呈しているが、理由はシンプルで、どれだけそれぞれの個性、特長を表現し、質の高いプロジェクトの立ち上げに追求したところで、サービスの仕組み、UI、UXに大きな差がないからだ。

それはプロジェクトオーナーから見ても同様で、プロジェクトを成功させることができても、基本的にそれは短期的な成果であり、資金調達自体を仕組み化することはできない。クラウドファンディング事業者がこの課題を今後どのように解決していくのか、注目してほしい。

2:資金調達方法の多様化

購入型クラウドファンディングの成長という観点で次に挙げられるのが、資金調達の多様化である。

まず、クラウドファンディングのプロジェクトは、「チャレンジ型」と呼ばれる目標金額に達しなければ支援を得ることができないAll or Nothing方式が主流だったが、最近では「ダイレクト型」と呼ばれる、金額の多寡に関わらず実行する方式も増えてきている。

つまり、やることは決まっているが、資金を調達することでやれることを増やしたい、規模を大きくしたい、プロモーションとしてクラウドファンディングを活用したいというケースなど、クラウドファンディングサービス上でできる選択肢が増えていることを意味し、必然的にプロジェクトも金銭の流通も増加する。

All or Nothing方式にリスクを感じるプロジェクトオーナーにとって身近なものになっただけでなく、すでに特定分野で認知されている、もしくはファンを抱えているプロフェッショナル(アスリート、アーティストなど)が活動を支援してもらう目的で使うという活用法が見い出されたことに価値がある。

たとえば、あるスポーツ選手が海外遠征にほぼ自費で行かなければならない状況にあるとして、それをクラウドファンディングでサポートできるのであれば、目標達成における課題を解決するソリューションになり得るわけだが、その場合ニーズに合うのはダイレクト型だ。

また、海外の事例で言うと、「Indiegogo Life」が多様化を示すものとして非常にわかりやすい。「Indiegogo Life」は、個人的な理由、たとえば緊急事態や医療費用、お祝いといった、ライフイベントのために資金を必要とする人向けのサービスとして「Indiegogo」からスピンアウトしたものだが、実際にあるカップルが体外受精に必要な費用を調達するプロジェクトを立ち上げ、成功している。

このように見ていくと、仕組みとしては出資の対価を受け取る購入型のクラウドファンディングであっても、寄付や支援の要素が強いものも成立することがわかり、あらゆるニーズに応えられるサービスがユーザーを増やしていくことは間違いなさそうだ。

3:セキュリティ、保証面での強化

一方、資金調達の方法が多様化することで懸念されるのが、ハードルが下がることにより必然的に発生するリスクである。

詐欺行為や実現不可能なプロジェクトにおける未回収リスクなどに対して、資金提供者の安心・安全を守れるかどうかは事業者側の課題になるだろう。

このような事態を想定してIndiegogoは、規制やフィルタリングという観点とは別に「保険オプション」を検討している。大規模な開発案件などでありがちな度重なる延期や中止という状況に直面した場合に、返金を保証するサービスとなれば、支援者は安心して投資できるようになるだろう。

そしてもうひとつ、セキュリティや保証面での強化がより必要になる大きな動きがある。これまで日本においては資金決済に関する法律等によって個人間の送金や投資が制限されていたため、購入型のクラウドファンディングが主流だったが、2015年にはこの構造自体が変わる可能性があるからだ。

2014年5月に成立した金融商品取引法の改正は、事実上の「株式(エクイティ)型」クラウドファンディングの解禁を意味し、未上場でも1億円を上限にネット上で公募増資ができるようになる。

資金調達の新たな選択肢として中小企業からは大いに期待を寄せられているが、参入要件が緩和され、投資者保護のための行為規制が導入される一方で、企業側の情報開示のルールが不明瞭であり、気軽に個人投資家になれても株式を売買できる場がないといった課題も山積している。

一口にセキュリティの強化と言っても、法規制なども複雑に絡み合っていて、一筋縄ではいかないのが実情なのである。

4:「投資型クラウドファンディング」の勃興

特に国内においては購入型クラウドファンディングが主流であるように感じられるが、売上シェアにおいてはどうだろうか。

実のところ、世界のクラウドファンディング市場で最も高いシェアを獲得しているのは「融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)」であり、約5,000億円と言われる2013年度のクラウドファンディング市場の41%(購入型:26%)を占める。

欧米と日本の市場規模が大きく異なる理由でもあるが、今後の市場の成長という観点で、融資型クラウドファンディングの浸透がポイントになることは間違いない。

国内の代表的なサービスとしては、業界の草分けであり最大手の「maneo」、日本で唯一証券会社が運営する「Crowd Bank」、「SBIソーシャルレンディング」、「AQUSH」などがあり、順調な成長曲線を描いている。

低い預金金利が慢性化している、銀行預金残高は上がるけれども貸し出し残高が下がっている、株式相場は個人資産まで手を伸ばせていない、といった課題を抱える日本は、新しい資産運用方法として融資型クラウドファンディングを後押しするにはもってこいの条件を備えていると言えるだろう。

また、最近ではスタートアップが購入型クラウドファンディングのプロジェクトを成功させ、その後ベンチャーキャピタルから投資を得る、というパターンも多くなってきたが、これを仕組み化し得るサービスが誕生しつつあることも見逃せない。

非上場企業の株式を売買できるサービス「Crowd Equity」を運営する日本クラウド証券は、グリーンシートにおける豊富な実績と知見を武器に、投資家観点で課題やリスクとされていたポイントをクリアし、株式型クラウドファンディング機能の提供と、発行会社の情報公開と株式流通の場の提供を目指している。

購入型や寄付型のサービスと違って法的な側面でのハードルは高いが、2015年以降広がりを見せる投資型クラウドファンディング市場において、新しいプラットフォームが生まれることに期待したいところだ。

5:ポイント決済による利便性の向上

最後に、クラウドファンディングが活性化する条件として「ポイント決済」を挙げたい。

ポイントサービス市場の先駆けである「Tポイント」はYahoo!と提携するなど、成長し続けている感はあるが、以前のような一強時代ではなくなっており、「Ponta」もリクルートポイントとの提携を開始し、最近では「Rポイントカード」、「au WALLET」など、圧倒的なユーザー数を誇る大手各社が、既存のポイントサービスと電子マネーを連動させた新しい形を作りつつある。

一見するとポイントサービスとクラウドファンディングは関係がないように思えるが、実はそうでもない。ポイントサービスは「貯めて、使う」もので、貯めるシーンと使うシーンが増えるほどに機能する。

一方、クラウドファンディングに関してはどうだろうか。プロジェクトが無数に増えれば利用者が増えるかといえばそうとも言えない。自分が気に入る、支援したくなるものに出会う確率は上がるが、利用するごとに支援金額が割り引かれたりポイントなどの特典がもらえるわけではないからだ。

そこで必要となるのが、出資するハードルを下げ、利便性を向上させる工夫である。

このことに注目し、早期から導入しているクラウドファンディングサービスが、プラットフォーム化の項目でも紹介した「WESYM」だ。WESYMは、クラウドファンディングのプロジェクトをお金だけでなく、ポイントでも支援できる独自の決済システムを構築している。

仮想通貨を購入する形でプロジェクトを支援し、決済の際にクレジットカードはもとよりTポイント、楽天スーパーポイント、永久不滅ポイントなど様々なポイントを使える。

「現金で支払う」というハードルを、「貯まったポイントを有効活用する」ところまで下げることで、気軽にサービスを利用してもらうことを浸透させようとしているのである。

ただ、ポイントカードがコモディティ化してもポイントが使われないように、クラウドファンディングサービスが通販サイトと同じような形で日常利用されない限り、大幅な成長は見込めないだろう。あくまでも、クラウドファンディング市場とポイントサービス市場が相乗効果で成長していく必要があるのだ。

ポイントサービスの成長はeコマースの成長に連動するものだが、利用シーンを増やさなければ本当の意味では活性化しない。だからこそ、クラウドファンディングに「決済システムとしての進化」と「サービスとしての深化」が求められる。この点は今後重要な指標となるだろう。

いかがだっただろうか。

筆者はここ3年ほど折に触れてクラウドファンディングについて書いてきたが、常々感じているのは「期待に反して盛り上がらないな」ということだ。

様々な理由が考えられるが、最大の理由は「とにかく利用者が少ない」というシンプルかつ残酷な事実にある。

独立系の企業が購入型クラウドファンディングサービスを乱立して凌ぎを削っていても、国内の市場規模は大幅に拡大しないということはわかっている。従来型のクラウドファンディングサービスを使わせるのは限界があり、サービス改善やスマホ利用が進んだところで、基本的には一部のリテラシーの高いアーリーアダプターを相手にビジネスをすることになるからである。

もちろん、上記5つのポイントが全てではない。だが、少なくともこれらが機能しないことにはパラダイムシフトは起きないだろう。クラウドファンディング業界を単独で考えず、広い視野に立って多角的に捉える必要があるのだ。

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